OCA TOKYO BLOOMING TALKS 003

世の中を動かす『聴く力』

Released on 2021.06.30

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

コミュニケーションの本質とは何か? そんな問いかけに対して、「答えは“聴くこと”にある」と話すのは、OCA TOKYOメンバーであるエール株式会社の篠田真貴子さん。人々が「聴く力」に着目することで、コミュニケーションはどのように変わり、社会がどのように動くのか。リベラルな視点とご自身の体験から導かれた、様々な考察を伺うことができました。

現代のコミュニケーションについて。

── コミュニケーションはよく“キャッチボール”で例えられますが、現代ではどのようなキャッチボールが繰り広げられていると思いますか? 実は、お互いに何もキャッチしていないのではないでしょうか。投げたボールが返ってこなくて、どんどんボールを投げてしまっている気がします。「話す」と「聴く」ではなく、「話す」と「話す」になってしまっている状態。それが、現代のコミュニケーションのような気がしています。

── 深刻な問題だと思う一方で、思い当たる節もあって耳が痛いです。 それは、私も同じで反省することもしばしばあります。例えば、アベノマスク報道のとき。初めての緊急事態宣言が出るかどうかという緊迫した空気のなか、安倍前首相がマスクを配ると発表して、私を含む多くの方が拍子抜けしたかと思います。そんなときに、弊社代表の櫻井から「世の中の人たちは、安倍さんの意図を汲んで聴いていないのでは?」と言われてハッとしたんです。確かに、私も聴くスタンスではなかったと。残念ながら、安倍前首相の意図を理解できないままですが、もっと発信者の意図に興味を向けていたら、受け止め方も変わっていたかもしれない。特に私たちは、自分よりも権威がある人を「役割」として見てしまいがちです。聴く力を身につけるためには、そういった意識を取り除くことが必要なのです。

── 篠田さんは以前から、コミュニケーションの本質は「聴くこと」にあるとおっしゃっていますが、何がきっかけで「聴くこと」について深く考えるようになったのですか? 知り合いが企画した“ピア・メンタリング”という活動に参加したのがきっかけです。確か6人でグループになり、毎週3時間くらいお互いの話を聴き合うというシンプルなルールでした。ちょうど前職を離れると決めていて、精神的な浮き沈みがある時期だったので“話を聴いてもらえる場”があったことにすごく救われたんです。また、話を聴いてくれると安心してコミュニケーションが取れて、双方向でより深い話ができるという発見もありました。そういった経験から「そう言えば、今まで聴くことを習ってこなかったな」という素朴な思いが生まれ、「聴くって、何だろう?」と深く考えるようになっていきました。

── 篠田さんは以前から、コミュニケーションの本質は「聴くこと」にあるとおっしゃっていますが、何がきっかけで「聴くこと」について深く考えるようになったのですか? 知り合いが企画した“ピア・メンタリング”という活動に参加したのがきっかけです。確か6人でグループになり、毎週3時間くらいお互いの話を聴き合うというシンプルなルールでした。ちょうど前職を離れると決めていて、精神的な浮き沈みがある時期だったので“話を聴いてもらえる場”があったことにすごく救われたんです。また、話を聴いてくれると安心してコミュニケーションが取れて、双方向でより深い話ができるという発見もありました。そういった経験から「そう言えば、今まで聴くことを習ってこなかったな」という素朴な思いが生まれ、「聴くって、何だろう?」と深く考えるようになっていきました。

「聴く」から始める、コミュニケーション。

── ところで、篠田さんが在籍されているエール株式会社は、「聴くこと」を事業として展開されていますよね? 簡単にご紹介をすると、社外の人材によるオンライン1on1サービスで、私たちがマッチングした社外の人が、お客様のお話を定期的に伺うことで、組織開発や人材育成に役立ててもらうというものです。利害関係のない人との対話を通じて、お客様自身でも初めて出てくるような思いや本音、モヤモヤしていた気持ちを引き出し、組織の中にある個々の価値観を言葉にして見えやすくしていきます。最近ではリモートワークを導入した企業からのニーズが増えており、本来であれば、オフィスというリアルな場での日常的なコミュニケーションによって深くわかり合えていた部分を、私たちのマッチングした社外の人間が話を聴き、本音を引き出すことで組織開発などを間接的にサポートしています。

── お客様からの具体的な声があれば教えてください。 弊社のサービスを利用し始めてから、家族とのコミュニケーションも変化したという方がいらっしゃいます。中学生の息子さんが父親である自分に「今度の日曜日に勉強を教えてほしい」と初めて言ってきてくれたのが嬉しかったそうです。私はそれを聞いたとき、その方が以前より「聴く状態」になっていて、それが息子さんにも伝わったのだと思いました。

── このコミュニケーションは、聴く状態が伝わることから始まっていますね。 まさにそうです。実のところ私は、「あなたに関心がありますよ」というシグナルこそが「聴く」の本質だと思っています。そのシグナルが伝わることで、安心して対話ができ、フラットなコミュニケーションになるのではないかと。ですから、自分が大事な話をしたいときこそ、相手の話を聴くというスタンスが重要です。一方で、自分が聴く側のときは斜に構えたりせず、自分からシグナルを伝えるつもりで耳を傾ける意識が必要です。

── このコミュニケーションは、聴く状態が伝わることから始まっていますね。 まさにそうです。実のところ私は、「あなたに関心がありますよ」というシグナルこそが「聴く」の本質だと思っています。そのシグナルが伝わることで、安心して対話ができ、フラットなコミュニケーションになるのではないかと。ですから、自分が大事な話をしたいときこそ、相手の話を聴くというスタンスが重要です。一方で、自分が聴く側のときは斜に構えたりせず、自分からシグナルを伝えるつもりで耳を傾ける意識が必要です。

── 聴くことは、強みになりますか? 聴く力を身につけることは、おかしな言い方ですが、絶対に「お得」です。優れた聴き手は、プライベートでも仕事でも必要とされる存在になります。さらに、自分の言動にも耳を澄ませることができるようになると、客観的な自己理解が深まります。これはリーダーという役割を果たす人たちにとって必須の素養です。ふとした発言で大きな批判を受けますし、自分の真意を伝えるのが難しい時代ですので、影響力がある人ほど「聴く」を学ぶことは意義があると思います。

── どういったことを実践すれば、「聴く力」を身につけられるでしょうか? 例えば、今の自分にとって「話す」と「聴く」のバランスが99:1だとしたら、80:20くらいにするイメージで、“上手に伝える方法”ばかり考えることを少し抑えてみる。あとおすすめの方法として、1分なら1分と自分で時間を決めて、その間はメモを取らずに相手の話を“能動的に”聴いてみる。単純な意識の違いですが、それだけでも、いつもとまったく違うコミュニケーションを体験できると思います。

── 「話す力」から「聴く力」へ。その意識がこれからは必要なんですね。 今でもそうですが、コミュニケーションに対する悩みは、上手く話せないことやプレゼンテーション能力が低いといった「発信」に対することがほとんどです。聴くという「受信」についてあまり目が向けられていないのですが、聴く力が未熟であるという課題は、日本だけでなくビジネスカルチャーのある先進国に共通しています。優れた聴き手が世界中に増えて、コミュニケーションの質が変わり、世の中全体が良くなるといいですね。
ただ、この話をしながらいつも思うのは、私自身が「聴く」について「発信」しているという、ある種のパラドックスに陥っていること。今日もたくさん話をしながら、自分の声で耳を痛めています。

── 「話す力」から「聴く力」へ。その意識がこれからは必要なんですね。 今でもそうですが、コミュニケーションに対する悩みは、上手く話せないことやプレゼンテーション能力が低いといった「発信」に対することがほとんどです。聴くという「受信」についてあまり目が向けられていないのですが、聴く力が未熟であるという課題は、日本だけでなくビジネスカルチャーのある先進国に共通しています。優れた聴き手が世界中に増えて、コミュニケーションの質が変わり、世の中全体が良くなるといいですね。
ただ、この話をしながらいつも思うのは、私自身が「聴く」について「発信」しているという、ある種のパラドックスに陥っていること。今日もたくさん話をしながら、自分の声で耳を痛めています。

新しいメディアとの付き合い方。

── 少し話が変わりますが、篠田さんがコミュニケーションに疲れたとき、どうやってリフレッシュしていますか? よくお風呂で本を読んでリフレッシュしています。昔は紙の本を持ち込んでページがふやけてしまうまで読んでいたのですが、Kindleが登場してから早々に切り替えました。最初は防水仕様ではなかったのでチャック付きの保存袋に入れてお風呂場へ。それでも何台か水没させましたね(笑)。今の端末で7〜8台目でしょうか。お風呂に限らず、Kindleはコンパクトなのでいつも持ち歩いています。

── Clubhouse、VOOXといった、最近の音声メディアについてどのような印象がありますか? 私も使う機会がありますが、自分をモニターに映す必要がないので、自宅で寛ぎながら話したり聴いたりしています。それこそ、Clubhouseを使ってOCA TOKYOでのおしゃべりを発信することもできそうですね。伝えたいことを自分の声で発信できることや、その声を手軽に受け取れることが魅力かもしれないですね。

── 肉声が届くことは大きな魅力ですよね。 肉声の魅力については、ClubhouseやVOOXに限らず、オーディオブックを利用するときにも同様に感じていました。例えば、ミシェル・オバマさんの回顧録は、ミシェル本人がすべて朗読しています。プロのナレーターの声ではなく、彼女の肉声によって人生を振り返るストーリーが届くことは、活字を追うよりもずっと心に響くものがありました。聴いているだけで自然にミシェルと友達気分になれるんです。

「芯」の部分に触れる場所。

── OCA TOKYOについて、どのような印象を持っていますか? ボードメンバーの錚々たる顔ぶれに恐縮しきりですが、多様な人たちが集まる場をゼロから築いていくところに面白みを感じます。私自身、今のエールという会社は、偶然の出会いからスタートしているので、OCA TOKYOでも素敵な偶然が生まれることを期待しています。

── ボードメンバーとしてOCA TOKYOでやりたいことがあれば教えてください。 人との出会いによる学びは、これからも続きます。その延長線上にOCA TOKYOがあるイメージです。この場所でご縁をいただいた方、名前は存じ上げているけれど深く話したことがない方、自分とは異なるバックグラウンドをお持ちの方…。いろいろな方のお話が聴けると嬉しいです。メディアを通すと伝わらない話や、あまり知られていない「芯」の部分、そういったところにも触れることができる場所になるといいですよね。華やかな会話じゃなくてもいいので、身近な会話を小さく控えめに「それでそれで?」と耳を傾ける。そんな時間を楽しみたいと思っています。

篠田 真貴子

エール株式会社

日本長期信用銀行(現・株式会社新生銀行)、米国でMBA取得、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月よりほぼ日の取締役CFOを務める。2018年11月に退任後、1年3ヶ月のジョブレス期間を経て、2020年3月から現職取締役に。趣味は料理。

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