OCA TOKYO BLOOMING TALKS 008

風に乗り、波に乗る

Released on 2021.08.16

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

デジタルシフトが加速するなか、企画力、プロデュース力でラジオの新たな可能性を切り開き、ニッポン放送ひいてはラジオ業界をも牽引してきたOCA TOKYOメンバーの檜原さん。スマートで飾らない語り口の奥に、仕事も人生も自ら切り開いていく意志の力を感じました。

拡大する音声メディアの可能性。

── 最近、ラジオ人気が復活しているそうですね。 10年ほど前に登場したradikoの影響で、若者が再びラジオに戻ってきました。ラジオというメディアは、アイズフリー・ハンズフリーで接触できるので、若者の生活スタイルに合っているのだと思います。さらに、去年からのコロナ禍によって世代を問わずリスナーは増えました。在宅ワークの影響でどのメディアもユーザーを増やしたと思いますが、最初の緊急事態宣言が明けてからもラジオへの接触率は下がっていません。オールナイトニッポンは、第7次黄金期と言えるほど人気です。

── オールナイトニッポンが昼間でも聴ける時代となりました。便利である一方で、リアルタイムの良さが失われていませんか? 聴くタイミングを選べることで、リスナーの自由度は増しています。でも実は、今でもリーチが高いのはリアルタイムです。ラジオの生放送は、何が起きるかわからない楽しみがありますから。深堀り型やファンコミュニティが形成されるような、「熱狂」を生み出せるコンテンツほど人気が高いですね。例えば、「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」で企画した歌謡祭は、12,000人分のチケットが10分ほどで完売。オードリーの日本武道館でのラジオイベントも即完売でした。改めてリスナーの力はすごいと思います。パーソナリティが一心同体で番組を盛り上げてくださっていると感じますね。

── 音声SNSとして急速に広がっているClubhouseについてはどう感じていますか? Clubhouseは今のところ会話の場であり、ラジオよりもリスナーが能動的に参加できるイメージがあります。ラジオは、もう少し演出があります。定められた時間の中でプロとして演出・制作してお届けする点でも、ラジオとClubhouseとは似て非なるものだと思いますね。さらに大きな違いとしては、放送局は免許事業なので、正しいことを伝えるという報道の義務があることです。災害時に正確な情報をいち早く伝える。そんな体制を整えている点がまったく異なります。

── 近年、様々な音声メディアが登場して、音声市場は拡大していますね。 音声メディアとして既に育っているものに、ポッドキャストがあります。ニッポン放送では、2019年に「JAPAN PODCAST AWARDS」というものをつくりました。既存のラジオ番組ではなく、ポッドキャストのオリジナル番組を発掘して表彰する日本初のアワードです。2019年では、歴史を掘り下げる「COTEN RADIO」が、2020年では、食をテーマにしたフードエッセイストの「味な副音声」がそれぞれ大賞を獲りました。いずれにしても、今後は各社が音声SNSアプリをリリースしていくでしょうし、音声メディアはまだまだ可能性を秘めていると思っています。

生きること、楽しむことを、意識的に。

── ところで、檜原さんは少女時代を海外で過ごしていて、ご学友がアメリカのバイデン政権の要職に就いているそうですね。 5歳から小学校4年までをイギリスで、中3から高校卒業までをフランスで過ごしました。国務長官となったアントニー・ブリンケンとイラン特使のロバート・マレーは高校時代のクラスメイトです。当時のyearbook(卒業アルバムのようなもの)には、二人からの寄せ書きもあります。同級生の活躍は素直に嬉しいですね。SNSでつながっている当時のクラスメイトたちもみんな喜んでいます。

── 檜原さんも在京キー局初の女性社長としてご活躍なさっていますが、どのようにキャリアアップしてきたのでしょうか? 意識的にキャリアアップしてきたというより、その瞬間、瞬間を100%生きる感覚で仕事をしていたと思います。一つひとつに一所懸命にあたる感じです。あとは、仕事を楽しむことを心がけていました。10ある仕事のうち9はプロとしてやるべき業務だとしても、残り1の部分で、何かしら自分が楽しめることを実現させようという意識です。結果としてモチベーションを高く維持することができ、ステップアップにつながったのかもしれません。

── 「自分が楽しめること」とは、例えばどのようなことですか? 中国アート展や全国写真展、タレントを起用した企画などですね。昨年はMISIA(ミーシャ)のクリスマスイベントを丸ビルで行ないましたし、少し遡りますがバブル時代に企画したユーミンと丸の内OL合唱団とのイベントは印象に残っています。バブル時代のアイコン的存在だったユーミンが、肩にカーディガンをかけて財布を持ってランチに出かける丸の内OLの姿に憧れていたこともあり、ユーミンと女性ワーカーが語り合うスタイルの企画が持ち上がったのです。語らいの一部をラジオでオンエアしたり、丸の内ハウスの全フロアを写真家のレスリー・キーが撮り下ろしたユーミンの写真で埋め尽くしたりして盛り上がりましたね。

激動の時代も、リスナーに寄り添って。

── 檜原さんにとって、人生を謳歌するには何が必要だと思いますか? 今は激動の時代。価値観も変わりつつある転換期。そしてコロナ禍のようなことも…。鬱やディプレストにもなりやすい時代だからこそ、心地良く過ごすにはどうしたらいいかを常々考えて、自分をコントロールすることが大切だと思います。外の空気を吸う。朝日を浴びて散歩する。人に会う。美味しいものを食べる。そうやって意識的にアジャストしながら、新しい風を吹かせたり、波に乗ったり。自らの意志で心地良さや楽しさを生み出す能力をつけていくことが、人生を謳歌するコツではないでしょうか。

── 予想外の困難が訪れたときは、どうしていますか? 困難はいつもやってきますから“ケセラセラ(なるようになる)”でいるしかないです。壁が訪れたらそれにぶつかるのではなく、サーフィンのようにうまく波に乗って越えていく。抗ったり向かったりせず、ありのままの自分で風のように軽やかに日々をつないでいく。高校のyearbookにも似たようなことを書いてありますね。「始まりもなく終わりもない。偽ることに意味はなく、人生は続いていく」。この感覚はずっと変わっていません。

── このような激動の時代にラジオが担うべき役割というのはありますか? 音声だけで伝えるラジオは、嘘をつけないメディアだと考えています。映像がないことで、リスナーが自分で想像し、咀嚼し、頭を動かす。そのため、心にもないことを言うとすぐに気づかれてしまいます。声って、すごく正直です。情報が溢れている昨今は、フェイクとファクトを見分けることが難しくなっていますよね。正しいことが見極めづらい、ある意味怖い時代です。そんな時代においてラジオは、誠実なメディアでなくていけません。常に人々に寄り添い、正しい情報と共感を呼ぶような喜怒哀楽をお届けしようと思っています。

丸の内の魅力を、もっと。

── 檜原さんにとって職場でもある丸の内とは、どのような場所ですか? 丸の内は、東京の中でも3本の指に入る美しい街並みだと思います。個人的には、再開発前の街並みも凛とした美しさがあって好きでした。皇居があり、高さの揃ったオフィスビルが並び、ビジネスのヘッドクォーターが集まった格式のある佇まいがあって。今はさらにエンターテイメント的な要素が加わってきましたね。仲通りもどんどん活性化していき、私自身も仕事以外で丸の内を楽しむことが多くなっています。

── 丸の内にあるOCA TOKYOでのイベントを、もし檜原さんがプロデュースするとしたら? 例えば、新しいカタチのディナーショーはいかがでしょうか。ホテルで行なわれるイメージがありますが、OCA TOKYOが会場でも成立しそうです。歌に限らず、落語をしても楽しいかもしれません。あとは、原点回帰でClubhouseのリアル版のような場をつくるとか。リアルな場には、何気ない会話や雑談から生まれる偶発的な面白さがありますから。私自身もどちらかというとリラックスしに訪れたいと思っているので、遊びのなかから発展的な話ができたり、何かが生まれたりすると楽しいと思います。

── 丸の内にあるOCA TOKYOでのイベントを、もし檜原さんがプロデュースするとしたら? 例えば、新しいカタチのディナーショーはいかがでしょうか。ホテルで行なわれるイメージがありますが、OCA TOKYOが会場でも成立しそうです。歌に限らず、落語をしても楽しいかもしれません。あとは、原点回帰でClubhouseのリアル版のような場をつくるとか。リアルな場には、何気ない会話や雑談から生まれる偶発的な面白さがありますから。私自身もどちらかというとリラックスしに訪れたいと思っているので、遊びのなかから発展的な話ができたり、何かが生まれたりすると楽しいと思います。

檜原 麻希

株式会社ニッポン放送 代表取締役社長

大学卒業後、ニッポン放送入社。コンテンツビジネスやインターネット放送などラジオと通信の融合を進める。丸の内発のラブソング専門局SuonoDolceの開発やオールナイトニッポンの新ブランディングなどでプロデュース力を発揮。2019年6月、在京キー局初の女性社長に就任。

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