SELECTED EVENTS 001

能の「謡」を世界へ届ける

Released on 2021.08.31

7月28日にOCA TOKYOにて開催されたイベント『現代音楽×能』では、お越しいただいた皆さまに独創的で表情豊かなパフォーマンスを堪能していただきました。今回は、そんな感動を届けてくれた能声楽アーティスト・青木涼子さんにインタビュー。本番直前の控室にて、ご自身が生み出した「能声楽」への思いや、OCA TOKYOに対する期待などをお聞きしました。

能声楽家青木 涼子

能の「謡」を現代音楽に融合させた「能声楽」を生み出し、現代の作曲家を惹きつける「21世紀のミューズ」。2013年テアトロ・レアル王立劇場での衝撃的なデビューを皮切りにヨーロッパを中心に活動し、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団など名門オーケストラと共演。これまで世界19ヵ国50人を超える作曲家たちと新しい楽曲を発表。世界からのオファーが絶えない、現代音楽で最も活躍する国際的アーティストのひとり。
■公式ウェブサイト https://ryokoaoki.net/

時代に応化することで、芸術は進化する。

── まずは、青木さんの生み出した「能声楽」についてご紹介ください。 能というと、能面をかけて舞っているイメージがあると思いますが、その他に「謡(うたい)」という声による表現も大きな役割を果たしています。この謡と現代音楽を融合させたものが「能声楽」で、謡の魅力を現代的に再構築して世界へ発信してみたいという私の思いが原点になっています。能と現代音楽、一見すると相反する印象もあると思いますが、現代音楽には、西洋音楽の文脈になかった音を探求する歴史があります。そのため、謡独自の歌唱や声域に対して皆さん非常に関心を持って曲を作ってくださるので、私自身とても勇気づけられていますね。

── 今回、演奏する曲のご紹介と、選んだ決め手を教えてください。 まずはパリ在住の作曲家である馬場法子さんの「ハゴロモ・スイート」という楽曲。「羽衣」という能楽作品の4つの光景を切り取って、浜の喧騒、松風、衣摺れなどの現象を音で再構築したオペラのような構成の曲です。世界3大オーケストラの1つである、オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団で演奏したほか、再演率が非常に高い人気曲です。2曲目は、ディアナ・ロタル作曲の「般若」という作品。「道成寺」という演目に登場する般若をモチーフに、作者自身のルーツであるルーマニアの神話やバルカン半島の音楽から影響を受けた楽曲です。楽譜があるとは思えないカオティックな音の世界や、奏でる音と声色がシンクロする瞬間など、目と耳と想像力で楽しんでもらえたら嬉しいです。

── 最後にOCA TOKYOの印象や、今後の活動に対する思いなどを教えてください。 私自身、美術館巡りが趣味なので、館内の至るところに展示された現代アートが素敵だと思いました。他にもブックバーの書籍も充実していますし、ここにいるだけで知的好奇心がわいてきます。あとは、OCA TOKYOの「鮮烈に人生を謳歌する」というコンセプトのほかに、時代に「応化」するという意味があると聞いて非常にシンパシーを覚えました。実は、世阿弥の教えに「定住することなく常に新鮮であり続けなさい」という意味の「住せぬは花なり」という言葉があるのですが、これはまさしく「応化」の重要性を説いたもの。能声楽の活動においても、時代や状況にしなやかに応化しながら、邁進していきたいと改めて思いました。

冒頭では青木さんのご経歴をご紹介いただきました。

1曲目 馬場法子「ハゴロモ・スイート」謡と弦楽四重奏のための

2曲目 ディアナ・ロタル「般若」謡と弦楽四重奏のための

情景が浮かんでくるような演奏と、聴く人の想像力を掻き立てる能の謡による歌唱が見事に融合していました。

アフタートークの様子。

OCA TOKYOでは「鮮烈に人生を謳歌する」をコンセプトに、皆さまの感性を揺さぶるイベントを開催しております。詳細はトップページをご覧ください。

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