OCA TOKYO BLOOMING TALKS 010

品格と自由のバランス

Released on 2021.08.31

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

OCA TOKYOが魅力的な社交場になるために必要なものとは?OCA TOKYOメンバーのジョンロブジャパン 松田智沖さんにお話を伺いました。長年培われてきたブランドの美学、ヨーロッパ文化にまつわるお話、ホスピタリティに溢れる言葉の中から、これからの大人たちにふさわしい場づくりのヒントが見えてきました。

とある紳士のブランドイメージ。

── 松田さんが、最初にファッションに興味を持ったのはいつごろですか? 1970年代後半の14歳くらいのときですね。想像しづらいと思いますが、私は当時スケートボードに夢中でした。サーフィンブームも盛り上がっていた時代でしたし、自然とストリートカルチャーからファッションに興味を持つようになっていきました。

── そんな松田さんがエルメスに就職する、その決め手は何だったのでしょうか? とにかく海外で仕事がしたかったという単純な理由です。外資のファッションブランドの会社が楽しそうだなと考えて就職した後、数社を経てエルメスグループに行き着きました。今から24年程前のことですね。

── その後、2005年にジョンロブジャパンのトップになるわけですね。 当時、ジョンロブはすでにエルメスグループに入っていたのですが、日本も同様にグループ化する流れになり、そのタイミングで自分が社長をやりたいと名乗り出ました。それを聞いた当時のエルメス本社のCEOが話してくれたエピソードを、今でもよく思い出します。それは、飛行機の席で隣り合わせた一人の紳士との会話です。紳士は大手銀行の頭取を務める方で、社長はエルメスという名前を伏せて、ブランドビジネスをしていると伝えたところ、彼はこう続けました。「男が持つべきブランドは3つだけだ。ポルシェ、ライカ、そしてジョンロブである」と。つまり、ジョンロブはそれほど高い品格を持つブランドであることが浸透している。だから、日本でもしっかり腕を振るってほしい。そんな激励のメッセージでした。

── その影響もあってライカのカメラを愛用しているのですね。 そうですね。そんなに上手ではありませんが、生まれ変わったらカメラマンになりたいと思うくらい、写真を撮ることが好きです。おもに友人を撮ることが多いのですが、画像を後日送って喜んでもらえるとすごく嬉しくなりますね。スマートフォンで簡単に撮影できる時代に、あえてカメラで撮影してお届けすることで、そこにコミュニケーションが生まれます。そうすることで、簡単に消費されない思い出になる気がします。

── その影響もあってライカのカメラを愛用しているのですね。 そうですね。そんなに上手ではありませんが、生まれ変わったらカメラマンになりたいと思うくらい、写真を撮ることが好きです。おもに友人を撮ることが多いのですが、画像を後日送って喜んでもらえるとすごく嬉しくなりますね。スマートフォンで簡単に撮影できる時代に、あえてカメラで撮影してお届けすることで、そこにコミュニケーションが生まれます。そうすることで、簡単に消費されない思い出になる気がします。

多様な価値観を、どう捉えていくべきか。

── ヨーロッパの文化やジョンロブを愛用する人たちについて、松田さんはどのような印象をお持ちですか? イギリスをはじめとするヨーロッパは、もともと階級社会。日本で生まれ育った私にとって、その真髄はわかり得ないものがあります。それでも紳士服や紳士靴が日本に浸透しているのは、その装いに現れる品格に惹かれるからではないでしょうか。また、いわゆるジェントルマンに共通するのは、控えめであること。皆さんアンダーステートメントをとても大切にされています。そのあたりの美学を持つ方は、ジョンロブとの親和性が高いと感じますね。

── ジョンロブの靴は、一生物というイメージもあります。 ありがとうございます。今日履いている靴も、修理を繰り返しながら10年ほど履いています。そうやって長く愛用することはヨーロッパでも美徳とされています。日本にもモノを大切にする文化がありますし、さらに言えば、クラフトマン(職人)に対するリスペクトも持っています。ジョンロブが日本で受け入れられている大きな理由は、そのような価値観が似ているからだと思います。

── トラディショナルであり続けるためにブランドとして何を大切にしていますか? OCA TOKYOでも時代に応化することを大切にしていると思いますが、ブランドも同様です。やはり、時代の空気感、新しいカルチャーなど、いろいろな要素にツイスト(応化)していく必要があると思います。ひと括りに「伝統と革新」と言いますが、ジョンロブの歴史は、革新の連続です。ジョンロブジャパンから登場したスニーカーシリーズは、本国からは「修理できない靴は、果たしてジョンロブなのか?」という議論も起こりました。それでもチャレンジはするべきです。定番でさえも躊躇なくモディファイする。トラディショナルであり続けるためには、常に革新し続ける姿勢と推進力が必要だと私は考えています。

── 世界の大きな流れとして、ヴィーガンレザーなど動物由来ではない素材の可能性も模索されています。その点はどう受け止めていますか? これは革製品の歴史からも言えるのですが、あくまで食肉の副産物としてのレザーであり、決してバッグや靴を作るために動物を犠牲にしているわけではありません。ですからヴィーガンについては、人々の食文化とあわせて捉えるべきテーマだと思います。世界中で肉の消費量が減れば、必然的に革の希少性も高くなっていきます。ジョンロブとして、現時点でヴィーガンレザーについての具体的な動きはありませんが、世界全体の産業やライフスタイルの変化に応化したものづくりになると思います。

東京を代表する「大人の街」から。

── 松田さんは、丸の内という街についてどのようなイメージをお持ちですか? 丸の内は2005年からジョンロブが店を構える場所ですし、私自身も慣れ親しんできた街です。東京の中心であり、豊かな緑に囲まれた皇居もある。トレンドに流され過ぎず、洗練された大人が心地よく集まるところ、そんなイメージがありますね。

── OCA TOKYOは諸外国のクラブと比べてどのような印象ですか? 格式高い社交場であるほど、一般的に近寄りがたくクラシカルなものです。ヨーロッパではいまだに女性が入れない所もありますから。OCA TOKYOは、老若男女を問わず多様な方が集まりますし、品格を携えながらも寛容な雰囲気があると感じます。現代アートも数多く展示されていて、若々しいインスピレーションを得られる空間だと思いますね。

── メンバーとしてOCA TOKYOに何を期待しますか? 丸の内は東京に唯一残された「大人の街」。そこにあるプライベートクラブとして、精神的に成熟した大人が集まる場所であってほしいです。鍵となるのは品格と自由。場所の品格は、集まる人たちの品格によって醸成されます。そこに自由をバランスよく取り入れることが重要です。自由とは「なんでもあり」ではありません。それではOCA TOKYOが目指す世界観が壊れてしまいます。使う人たちが心地よくいられる場づくりを、試行錯誤していくべきでしょうね。

── ドレスコードについてはどうお考えですか? ジョンロブを履きましょう、と言うのは冗談です(笑)。多様な価値観を大切にする今の時代、ファッションによって線引きをするのは難しいと感じています。昔ながらのドレスコードは必要だとは思いませんし、ジャケット着用が必須と言われても困ってしまいますよね。要するに「センスが良ければいい」ということですが、人によってセンスも捉え方も違います。個人的には、この場所に合う「新たな品格の基準」があってもよいのかもしれないと思っています。

── ドレスコードについてはどうお考えですか? ジョンロブを履きましょう、と言うのは冗談です(笑)。多様な価値観を大切にする今の時代、ファッションによって線引きをするのは難しいと感じています。昔ながらのドレスコードは必要だとは思いませんし、ジャケット着用が必須と言われても困ってしまいますよね。要するに「センスが良ければいい」ということですが、人によってセンスも捉え方も違います。個人的には、この場所に合う「新たな品格の基準」があってもよいのかもしれないと思っています。

日常をエレガントにする社交場を。

── 今後、どのようにOCA TOKYOを活用したいと考えていますか? イギリスには、人々が集まる習慣としてパブ文化が根づいています。階級に関係なく人々が集まり、一杯飲んで食事に出かけるようなイメージです。フランスであれば、夕食前に軽く一杯飲むアペロという文化も素敵ですね。そういった日常的な使い方こそ、OCA TOKYOに似合う気がします。特別感のある上質な空間に、軽やかな気分で立ち寄ることは、振る舞いとしてもエレガントではないでしょうか。

── ジョンロブのお客様をお連れしたりすることも考えていますか? もちろんです。きっと喜んでくださる方が多いと思います。地方からのアクセスも良いので、東京駅からジョンロブ、そしてOCA TOKYOへとエスコートできそうです。ジョンロブを愛用するお客様は、私たちの誇りであり大切な方です。そんな方をもてなす場所として利用できることを、これから楽しみにしています。

松田 智沖

株式会社ジョンロブジャパン

エルメスジャポン株式会社を経て、2005年9月より現職代表取締役社長に。ビスポークメーカーとして150年以上の歴史を持ち、1981年にレディメイドの靴を発売してからは高級既成紳士靴の最高峰として君臨し続けている。現在、メンズの革靴のみならずスニーカーやウィメンズシューズまで幅広く展開。

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