OCA TOKYO BLOOMING TALKS 011

ワイングラスと多様性

Released on 2021.09.15

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

「ワイングラスは、なぜあんなにもたくさんあるのか?」そんな素朴な質問を、ワイン販売を生業とされるOCA TOKYOメンバーのエノテカ廣瀬恭久さんにお聞きしたところ、広尾にあるエノテカ本社にお招きいただきました。今回のためにご用意していただいた多様なワイングラスを手に取りながら、ワイングラスはもちろん、ワイン文化に対する深い愛情が詰まったお話をお伺いすることができました。

時代に応じて変化する、ワイングラスの役割。

── この世界には、どのくらいのワイングラスのタイプが存在しているのでしょうか? 私がパッと思いつくだけでも、80種類近いワイングラスがありますが、実際にはもっとあると思います。ワイングラスは古代ローマ時代から存在していたとされていますが、当時はグラス自体の見栄え、いわゆる装飾品としての役割が重視されていました。それが1950年代以降、徐々にワインを楽しむため、ワインの美味しさを引き出すためのモノとして進化していきました。

── ワイングラスの種類が増えていった理由は、どこにあるとお考えでしょうか? 一番の要因は、ワインの種類が増えたことです。次にワインの楽しみ方が多様化してきたこと。もともとは白と赤でさえグラスを分けていなかったのが、白と赤で分けるようになり、シャンパンで分けるようになり、ボルドーやブルゴーニュといった産地、カベルネやシャルドネといったブドウの品種でもグラスを分けるようになっていくことでグラスの種類も増えていきました。

── 特に興味深いグラスはありますか? こちらの「SENSORY GLASS」というグラスですが、これはピエモンテの有名なバローロの生産者が、「私たちのワインを楽しむならこのグラスで楽しんでほしい」と考案したグラスです。膨らみのあるフォルムからキュッとくびれていく曲線は、まるで「凝縮されたアロマを楽しんでほしい」と言っているようです。きっとワインの造り手の想いが、ワインだけではなくグラスにも表れてきているのでしょう。ワインに携わる人間にとって、こういった現象は非常に興味深いですし、今までになかったような形状や趣のワイングラスが今後生まれてくるかもしれません。

楽しむことこそ、選ぶ基準。

── ワインを飲む方たちに、どのようにグラスを選んでほしいでしょうか? 多くの人に自分の好きな味わいでワインを楽しんでほしいので、できることならワインのアロマや味わいをしっかり感じられるようなグラスを選ばれると良いかと思います。ある程度ふくよかなフォルムを持ち、口当たりの軽い、薄いグラスがおすすめですね。とはいえ、あまり堅苦しく考えず自由に選ぶのが一番です。ボルドーグラスでブルゴーニュワインを楽しまれても結構ですし、シャンパーニュを白ワインのグラスで味わっていただいてもまったく問題ないと思います。ワイングラスはあくまでもワインを楽しむためのアイテム。大切なのは、自分の好みを知ることです。

── プライベートでワインを楽しむ際の、こだわりがあれば教えてください。 私はワインが置いていないお気に入りの居酒屋に行くとき、お店のお許しをいただいて時々ワインを持ち込むのですが、一緒にワイングラスも持参するよう心がけています。ビアグラスでも飲めないことはありませんが、味わいを楽しむには少し厳しいですから(笑)。何よりもワインに対して申し訳ないと感じてしまいますので。

── シンプルにワインを楽しめばいい。そう思うことで、ワインをより一層深く楽しめそうな気持ちになります。 味だけが楽しみのすべてではないところも、ワインの面白いところです。そもそもワインほど世界中で作られ、愛されていて、ヴィンテージを含めて流通しているアルコール飲料は他にないと思いますし、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ネッビオーロ、ピノ・ノワールといったブドウの品種が実に豊富なのもワインの特徴です。例えば、イタリア産のワインを飲んでイタリアの話をしたり、ヴィンテージのワインを飲んでそのワインが生まれた年のことを話してみたり。国、土地、原料、人、歴史、食といった様々な要素が複雑に混ざり合いながらワイン文化は成り立っている。そんな飲み物だからこそ、食卓の上でいろいろな物語に想いを馳せることができるのではないでしょうか。

壁の中に眠る、造り手の家宝。

── ワインにまつわる“偶然”や“感動”のエピソードはありますか。 思い出されるのは、2年ほど前にイタリアのピエモンテ州に行ったときのことです。テイスティングのために訪問したワイナリーで偶然、およそ半世紀も昔のワインがあるのを発見しました。「ずいぶん古いワインですね」とお聞きしたところ、「このセラーを新しく改装した際に、壊したセラーの壁から出てきたワインなんです」と言うので驚きました。詳しく伺ってみると、どうやらピエモンテでは、セラーを建てる際に、子孫が見つけて幸せを得られるようにとワインを何本か壁に埋め込む、家族の絆を大切にした伝統があるとのこと。その後、オーナーファミリーとランチをご一緒したのですが、様々なワインを楽しんだ後で「最後にこちらを」と、1本のワインを持ってきてくれました。なんとそれが、例の壁から出てきた1971年ヴィンテージのワインだったのです。ファミリーにとって家宝のような大事なワインをその場でいただいて…。その心遣いに私は感動で涙が出ました。「自分たちの大事なワインの良さをわかってくれる人と楽しみたい。それが私たちにとって一番嬉しいことだから」というファミリーの言葉は、一生忘れられないです。

── ワインにまつわる“偶然”や“感動”のエピソードはありますか。 思い出されるのは、2年ほど前にイタリアのピエモンテ州に行ったときのことです。テイスティングのために訪問したワイナリーで偶然、およそ半世紀も昔のワインがあるのを発見しました。「ずいぶん古いワインですね」とお聞きしたところ、「このセラーを新しく改装した際に、壊したセラーの壁から出てきたワインなんです」と言うので驚きました。詳しく伺ってみると、どうやらピエモンテでは、セラーを建てる際に、子孫が見つけて幸せを得られるようにとワインを何本か壁に埋め込む、家族の絆を大切にした伝統があるとのこと。その後、オーナーファミリーとランチをご一緒したのですが、様々なワインを楽しんだ後で「最後にこちらを」と、1本のワインを持ってきてくれました。なんとそれが、例の壁から出てきた1971年ヴィンテージのワインだったのです。ファミリーにとって家宝のような大事なワインをその場でいただいて…。その心遣いに私は感動で涙が出ました。「自分たちの大事なワインの良さをわかってくれる人と楽しみたい。それが私たちにとって一番嬉しいことだから」というファミリーの言葉は、一生忘れられないです。

── 単なるビジネスパートナーではなく、人として敬意ある交流に心を打たれたのですね。 その通りです。改めて、ワインは私たち人間のコミュニケーションツールであると実感しました。もちろんワインだけが特別ではありませんが、私自身これまでワインを飲み交わすなかで様々な出会い、発見、学びを得ることができました。きっと、そこにはいつも“多様な価値をシェアする喜び”があったと思います。そういった目に見えないものまで、ワイングラスには注がれているのでしょう。ですからOCA TOKYOの皆さんとも、ワインを通じてお互いの価値観を共有していけたら嬉しく思います。

主人公は「人」である。

── OCA TOKYOにこれから期待することをお聞かせください。 OCA TOKYOには“謳歌”や“応化”といったコンセプトがありますが、プライベートクラブとしての価値を高めていくためには、その言葉のみに縛られる必要はないと思っています。大切なのは、クラブの価値を決めるのは私たちメンバー自身であるということ。ワインと同様に、主人公はあくまでも“人”です。だからこそ、OCA TOKYOで出会うメンバーとの絆や信頼関係、そして「我々はOCA TOKYOのメンバーなのだ」という一人ひとりの仲間意識が、これからは何よりも重要になっていくでしょう。すでに素晴らしいメンバーたちが集っていますから、一人ひとりがどうやってこの場を良くしていくのかを考えれば、自ずと行動規範なども決まっていくでしょうし、素晴らしい場所になっていくだろうと私は感じています。

── OCA TOKYOにこれから期待することをお聞かせください。 OCA TOKYOには“謳歌”や“応化”といったコンセプトがありますが、プライベートクラブとしての価値を高めていくためには、その言葉のみに縛られる必要はないと思っています。大切なのは、クラブの価値を決めるのは私たちメンバー自身であるということ。ワインと同様に、主人公はあくまでも“人”です。だからこそ、OCA TOKYOで出会うメンバーとの絆や信頼関係、そして「我々はOCA TOKYOのメンバーなのだ」という一人ひとりの仲間意識が、これからは何よりも重要になっていくでしょう。すでに素晴らしいメンバーたちが集っていますから、一人ひとりがどうやってこの場を良くしていくのかを考えれば、自ずと行動規範なども決まっていくでしょうし、素晴らしい場所になっていくだろうと私は感じています。

── OCA TOKYOで今後やりたいことがあれば教えてください。 丸の内にプライベートクラブをつくること自体、面白い試みですし、とても可能性を感じているので、私にできることがあればぜひ協力したいです。思いつくのは、やはりワインを通じて新しい仲間ができ、皆さんとより親しくなれる肩の力を抜けるイベントを実施することですね。その結果として「OCA TOKYOというすごく素敵な場所があるらしいよ」と周知され、さらに新しいメンバーが集まってくるといった広がりやつながりが醸成されることを期待しています。

廣瀬 恭久

エノテカ株式会社

大学卒業後、商社勤めを経て実父の経営する半導体部品会社に入社。半導体セールスのため世界中を巡るなか、ワイン市場に活路を見出し1988年8月、ワイン専門商社「エノテカ」を設立し代表取締役に就任。2015年3月、アサヒビール株式会社の完全子会社となり会長職に。

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