OCA TOKYO BLOOMING TALKS 014

揺るぎない価値観と生きる

Released on 2021.10.15

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

OCA TOKYOメンバーの田島雄志さんは、セルジオ ロッシをはじめ、ピエール マルコリーニ、ジョンロブ、エドワード・グリーン、デルヴォーなど、世界の蒼々たるブランドを日本に広めてきたインポートビジネスの第一人者。ご自身の仕事に対する思いについてお聞きしたところ、ブランディングやマーケティングという言葉では推し量れない熱量を伺うことができました。

モノとの出会いは、人との出会い。

── 社名である「クリーム オブ ザ クロップ」の由来について教えてください。 クリーム オブ ザ クロップとは、英語で「最上の最上」という意味です。2002年、新たに会社を立ち上げるにあたり、GQ JAPANの編集長である鈴木正文さんに「あなたは『最上の最上』を広めている人だから」と言われ、名付けてもらいました。今後もブレることのない指針となる名前だと思っています。

── 名立たる世界のブランドとは、どのようにして出会うのでしょうか? 思い返せば、すべてが偶然の出会いによるものですね。最初に手がけた婦人靴ブランドの「セルジオ ロッシ」は、たまたま知人の紹介がきっかけで手伝うことになりました。その後も分野を問わず様々なブランドに携わってきましたが、すべて人を介して出会っており、自分で発掘したと言えるものは一つとしてありません。ただし、それらのモノや手がける人のことを「好き」と思えるかどうかが、私にとって重要な条件でした。イギリスの紳士靴「エドワード・グリーン」の場合、私がイギリス在住時代に親代わりになってくれた恩人を経由して舞い込んできた話でしたが、もともと私自身がエドワード・グリーンの靴を愛用していたことも大きかったです。ビジネスを大きくしたいという野心より、好きだと思えるモノや人のために頑張る。シンプルですがこの意識は、昔も今も変わっていないですね。

── 名立たる世界のブランドとは、どのようにして出会うのでしょうか? 思い返せば、すべてが偶然の出会いによるものですね。最初に手がけた婦人靴ブランドの「セルジオ ロッシ」は、たまたま知人の紹介がきっかけで手伝うことになりました。その後も分野を問わず様々なブランドに携わってきましたが、すべて人を介して出会っており、自分で発掘したと言えるものは一つとしてありません。ただし、それらのモノや手がける人のことを「好き」と思えるかどうかが、私にとって重要な条件でした。イギリスの紳士靴「エドワード・グリーン」の場合、私がイギリス在住時代に親代わりになってくれた恩人を経由して舞い込んできた話でしたが、もともと私自身がエドワード・グリーンの靴を愛用していたことも大きかったです。ビジネスを大きくしたいという野心より、好きだと思えるモノや人のために頑張る。シンプルですがこの意識は、昔も今も変わっていないですね。

「磨けば光る」が、面白い。

── 田島さんの「好き」の基準について教えてください。 私の場合、完成された美しさよりもモノに宿る愛情に惹かれます。完璧である必要はないのです。磨かれていないモノを見つめ、そこにピカッと光る何かを感じるかどうか。感覚的に聞こえると思いますが、事実、世の中には不恰好だけれど「魂」や「愛」を感じさせてくれるモノがたくさんあります。私からすると「ジョンロブ」もその1つです。エルメスからエドワード・グリーンへ製造委託されたのがきっかけで携わることになるのですが、当時のジョンロブは外見こそ可愛いかったものの、履いてみると踵がすぐに抜けてしまうような靴でした。私は当時のジョンロブの社長に「靴の木型から作り直さないと日本では売れません」とはっきり申し上げました。このように対話と試行錯誤を重ねながらブランドを育てていく。「磨けば光る」という、そのプロセスに面白みを感じています。

── 原石を見つけ、磨いて届ける。その成功の秘訣はどこにあるのでしょうか? 大切なのは、楽しみながら取り組むことです。売れるかどうかは時代によります。だからこそ「儲かるモノ」を探すのではなく「売れると嬉しいモノ」を選んできました。「どうしたら売れるか」よりも「どうしたら好きになってもらえるか」を追求する。その方が絶対に楽しいと思っていますし、商売としても長続きします。そうすれば、やがて時が来て売れるだろうと(笑)。そのようなスタンスで今に至ります。

── 時代に応化するための、しなやかな心構えのようにも感じられます。 裏を返せば売れなかった話も山ほどありますよ。かつて西麻布に出した靴屋では月に6足しか売れないこともありました。あまりにも暇で居眠りをしてしまった日もあります。そんな日に限ってお客様がお見えになり起こしてもらう始末でした。それがだんだん雑誌に取り上げられて売れるようになるから不思議です。銀座に出店した「ピエール マルコリーニ」のヒットも、テレビの情報番組がきっかけです。あれこれと戦略で頭でっかちになるよりも、結局は“LUCK(運)”をつかめるかどうか。正直なところ、そんな実感の方が強いですね。

驕らず、阿ねず、卑しからず。

── 田島さんのお考えは、ビジネスとは別の軸足に重きがあるようにも感じます。 常々意識しているのは、紳士としての振る舞いです。大切にしているのは「驕らず、阿ねず、卑しからず」という姿勢。実践するのは難しいですが、今でも常に心に留めて努力しています。ビジネスにおいても、金儲けを第一に考えることはありません。私が信頼している職人さんたちは、流行るかどうか、儲かるかどうかは考えていません。純粋に良いものを作りたい、それだけを追求している方ばかりです。モノを売る私たちも、その意志や思いをリスペクトしてバランスを取るべきだと思っています。

── 2012年に清澄白河にオープンしたスペシャルティコーヒーのお店は自社ブランドですね。 いつかは自分のブランドを手がけたいという思いがありました。私は、昔のホテルのラウンジなどで提供されていたような酸味のあるコーヒーが好きで、最初は既存のコーヒーブランドと事業をする計画もありました。ところが、娘が先走ってアメリカで巨大な焙煎機を購入してきて、その勢いのまま、清澄白河に天井の高い倉庫物件を見つけたのが始まりです。ちなみにあまり知られていませんが、私たちが清澄白河のスペシャルティコーヒーの先駆けです。今では様々なコーヒーショップがあるエリアですが、1杯ずつ淹れるハンドドリップにこだわり、カフェではなく焙煎工場というスタイルを貫いているのは私たちだけだと思います。

── 2012年に清澄白河にオープンしたスペシャルティコーヒーのお店は自社ブランドですね。 いつかは自分のブランドを手がけたいという思いがありました。私は、昔のホテルのラウンジなどで提供されていたような酸味のあるコーヒーが好きで、最初は既存のコーヒーブランドと事業をする計画もありました。ところが、娘が先走ってアメリカで巨大な焙煎機を購入してきて、その勢いのまま、清澄白河に天井の高い倉庫物件を見つけたのが始まりです。ちなみにあまり知られていませんが、私たちが清澄白河のスペシャルティコーヒーの先駆けです。今では様々なコーヒーショップがあるエリアですが、1杯ずつ淹れるハンドドリップにこだわり、カフェではなく焙煎工場というスタイルを貫いているのは私たちだけだと思います。

── 田島さんが今力を入れている事業、届けたいモノについて教えてください。 自然栽培の日本茶、和紅茶およびそれを使用して自社アトリエで製造したオカラ、大麦のビスケットなどです。通常のお茶は、年に3回収穫するのが一般的。しかし、それでは土の養分がすぐに枯渇するため化学肥料を使わざるを得ません。私たちが出会ったお茶は、年に1回しか収穫しません。生産量は少ないですが、肥えた土壌を自然に保つことができます。完全な自然栽培なので、茶葉だけでなく木の幹や枝まで粉にすることで、無駄のないホールフードが出来上がります。最初に知人から紹介されて飲んだとき、その素朴な美味しさに感動しました。生産者の方ともお会いしましたが、目先の利益よりも自分たちの価値観を大切にしていました。そこに作り手の魂を感じて、私たちのお店で取り扱いたいとお願いしたのです。

── 田島さんが今力を入れている事業、届けたいモノについて教えてください。 自然栽培の日本茶、和紅茶およびそれを使用して自社アトリエで製造したオカラ、大麦のビスケットなどです。通常のお茶は、年に3回収穫するのが一般的。しかし、それでは土の養分がすぐに枯渇するため化学肥料を使わざるを得ません。私たちが出会ったお茶は、年に1回しか収穫しません。生産量は少ないですが、肥えた土壌を自然に保つことができます。完全な自然栽培なので、茶葉だけでなく木の幹や枝まで粉にすることで、無駄のないホールフードが出来上がります。最初に知人から紹介されて飲んだとき、その素朴な美味しさに感動しました。生産者の方ともお会いしましたが、目先の利益よりも自分たちの価値観を大切にしていました。そこに作り手の魂を感じて、私たちのお店で取り扱いたいとお願いしたのです。

人こそが、場所の魅力。

── 田島さんは、OCA TOKYOがどのような場所になってほしいとお考えですか? インポートビジネスであれば、商品に合わせて場所を選ぶことができますが、OCA TOKYOは「丸の内」という場所が起点ですよね。だとすれば、そこに集まる人が重要になってきます。人こそが、場所の魅力。裏を返せば、ここに集う人を魅力的にできる場所になれたら良いですよね。メンバー然り、様々なバックグラウンドを持つ人たちがこれからもっと集まると思います。若い頃の話で恐縮ですが、かつての老舗ホテルのラウンジのような品格と活気が溢れる空間になると嬉しいです。

── OCA TOKYOに期待していることを教えてください。 多様な人たちが織りなす、心の通ったつながりが生まれることを期待しています。自己紹介ならオンラインでもできますが、人が心を通わせるのは、いつの時代もリアルな場所だと思います。私自身、大切な人も、上質なモノもリアルな場で出会っているので、OCA TOKYOでも引き続きそのような体験がしたいですね。年齢・国籍・性別・派閥も関係なく、お互いの価値観を尊重しながら、様々な人たちと交流できることを楽しみにしています。

田島 雄志

株式会社 THE CREAM OF THE CROP AND COMPANY

イギリスの大学卒業後、会社員を経て29歳で起業。「セルジオ ロッシ」「ジョンロブ」などを日本に初めて紹介する。2001年に「ピエール マルコリーニ」の総代理店となり、2002年には銀座に店舗をオープン。2012年、清澄白河に「THE CREAM OF THE CROP COFFEE」、2019年より「カドー ナチュール」など、自社ブランドもスタートさせる。

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