OCA TOKYO BLOOMING TALKS 015

私のエンジン

Released on 2021.10.28

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

今回は、OCA TOKYOメンバーである澤田真弓さん、申真衣さん、鈴木正文さんの3名による対談です。OCA TOKYO内を見て回りながら「自分のエンジン(原動力)」というテーマで、活躍の場が異なる3人それぞれのお考えを話していただきました。

それぞれの「逆境」に対するシフトチェンジについて。

── 席に着くなり中央に置かれたテーブルに興味津々。これはテーブルの中にある砂の上を球体が自動で動きながら、枯山水のような美しい絵柄を描くキネティックアート。その様子を眺めるところから、対談はスタートしました。

私は、外国人患者さんが医療施設に来院した際、医療者がいつでも利用できる「メディフォン」という遠隔医療通訳を提供する事業を行なっています。国内における訪日外国人の数が増えたことで現場の課題感が強まり順調にサービスが浸透してきましたが、昨年のコロナ禍で訪日外国人数が激減。環境が一変しました。

この1年でどのように一変したのですか?

この1年で、在住外国人の方の対応が急増したのです。新型コロナウイルス感染症拡大の影響による受診や保健所や宿泊療養施設の対応が増えたことで遠隔医療通訳のニーズが高まりました。

異国の地で感染症と向き合うのは不安もあるでしょうし、在住外国人の方もきっと困っていたでしょうね。コロナ禍以降の方が、国や病院からの理解も得られたのではないでしょうか。

厚生労働省や自治体、医療団体が理解を示し、導入促進してくださったことが大きかったですね。保健所や消防、企業における産業医の面談など、利用される場面も拡張しました。

インバウンドの外国人患者だけではない国内の潜在的なニーズが表に出たのですね。

はい。これまで在住外国人の課題について認識はされていたのですが、コロナ禍で顕在化したという印象です。申さんはいかがでしたか?

私はゲーム機のリース事業などを行なっているのですが、昨年のコロナ禍ではお店を開けず、ゲームセンターの客足もすごく落ち込んで業界全体が厳しい状況にありました。その逆境の中、私たちはあえて積極的に動きました。昨年末に株式会社セガ エンタテインメントの株式を約85%取得。ステージをひとつ上げて、アミューズメント施設運営事業を開始しました。

思い切った決断をしたのですね。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが度々発出されましたが、売上はコロナ禍に入る前の9割にまで回復しています。

その回復の要因はどこにあると思いますか?

昨年は“おこもり需要”によって、例えば「鬼滅の刃」のようなアニメやゲームがヒットしましたよね。そういったコンテンツへの興味が強まった結果、今までゲームセンターに行くことがなかった層が、物販を目当てに足を運ぶようになったことが大きな要因だと考えています。コロナ禍で人の動きは制限されましたが、「遊びたい」という人々の根源的な欲求はなくならないと感じましたね。鈴木さんはどんな変化がありましたか?

これは一般論ですが、もともと伸び悩んでいた雑誌の売上がコロナ禍でさらに厳しくなりました。しかし、その一方で、デジタルエンゲージメントは高まりましたね。当初数年の想定で考えていた目標の数字に、あっという間に到達してしまうという現象も起きて、ウェブマガジンや動画を楽しむ人々が確実に増えました。

ファッションやライフスタイルへの関心はコロナ禍でも変わらないのですね。

そうですね。ファッションもライフスタイルも自分を大切にするためにあるものですから、コロナ禍は、そういう自己愛(セルフ・ラヴ)の気持ちを高めることにつながったと思います。そんな中で、ひとりでいる時間が増えて、リラックスできるホームウェアや、ちょっと近所に出かけるウェアを兼ねた「ワンマイル・ウェア」、それにワークアウト・ファッションなどが伸びました。それから、マスクが恒常的なものになって、そこにメッセージを載せる、という動きも出てきたのは、ちょっと新しかったかも、です。例えば、大坂なおみ選手が全米オープンテニス選手権で、警察による暴力被害にあった黒人犠牲者の名前が書かれたマスクを身に着けたように、意思表明のアイテムとして使われるようにもなりましたね。これは良かったと思います。一方、我が国では、キテレツなマスクをして記者会見に出てくる大臣や知事なんかも出現しました。コロナ禍に乗じた浅ましい政治主義と言わざるをえませんね。

私を動かす「エンジン」とは?

── 自分たちの逆境について話すうちに、話題はそれぞれの「原動力」へと移っていきました。

もともと外国人医療については、何十年も前から社会課題になっていました。しかし、マイノリティ領域の課題であるため、国も自治体もなかなか予算が割けず、ボランティアが中心となって活動する状況が続いていました。そんな状況を知りつつ、何もできないもどかしさを感じていたとき、社会活動家の湯浅誠さんとの出会いがありました。社会のセーフティネットからこぼれ落ちてしまった人たちのために賃貸保証人になるなど、やりたくても簡単にはできない、非常にリスクある活動を立ち上げた経験のある彼に「なぜそんな大変なことをするのか?」と質問したところ「だって、誰もやらないから」という答えが返ってきました。そのシンプルな答えが腑に落ちて「私もしっかり向き合おう」と思えたのです。ビジネスサイドの経験を活かし、仕組みまではつくれるだろうと。あとはここから立ち去らない。メディフォンという事業を立ち上げたときのそんな初心が、私の原動力になっています。

私の原動力は、間違いなく家族。家族との時間を何よりも大切にしています。正直コロナ禍以前は、仕事に打ち込む時間や通勤時間が大半を占めていて、家族との時間は休日がメイン。平日に子どもと夕食を一緒に食べることもなく、家族との時間が少ないことに疑問すら感じていなかった。しかし、コロナ禍になってからは、毎晩一緒に家族で食卓を囲み、それぞれが日々どんな経験をして何を感じているかを知る。そんな毎日に幸せを感じています。こんなにかけがえのないものだったのかと、改めて気づきました。昨年第二子が生まれたのですが、子どもたちの日々の成長を目の当たりにする機会が増えたのも嬉しいですね。

僕の原動力は、仕事もプライベートも関係なく「人の役に立つ」ことでしょうか。そのために生きているようなものです。澤田さんはビジネスとして成り立たせないと活動が継続できないというジレンマを抱えながら、本来なら国がやるべき仕事を代行するような事業を興すことで、社会の問題点を照らし出した。一方、申さんは、これまで自分のために使っていた時間を、家族のために使うようになったことが、結局は自分の糧になっていることを自覚されたわけですよね。世界中がコロナ禍の危機に直面したことで、生きることの根本的な意味を考える機会がいまさらのように生まれたのだと思います。そこで浮き彫りになってきたのが、僕たちの存在理由ですが、お二人の話を聞いていて思ったのは、結局僕たちは、「自分のために生きても幸せを感じられない」ということです。利他的な存在であることこそが、僕たちに意味を与えてくれるのではないでしょうか。

丸の内にできた、もうひとつの「家」のように。

── OCA TOKYOの中を散策する3人。それぞれどんな使い方をしたいか話していただきました。

私は、待ち合わせの場所として使いたいですね。予定時間よりも早めに来て、ブックバーで過ごすのもいいですね。相手が少々遅れたとしても、自分らしく待ち時間を楽しめると思います。

ピットストップする感じもいいですよね。アポイントの合間に立ち寄って、仕事をしたり寛いだり。予定と予定の隙間にちょっと立ち寄る場所にしたいです。

── コンディショニングスタジオでは、すっかり和気藹々とした雰囲気に。

皆さんは、普段から運動されていますか? 私は週に1回もできなくて…。

僕は週1ペースで、キックボクシング。

いいですね! 私は週1回、筋トレとヨガを続けています。ここで体を動かしてみたいな。

丸の内は皇居ランもできるし、走った後にシャワールームで汗を流せるのもいいですよね。

── 3人それぞれがファブリックを選び製作されたシートに座り、OCA TOKYOのコンセプトムービーを鑑賞。

例えばパリで4畳半の質素なアパートに住んでいたとしても、部屋から一歩出れば、カフェがあって、劇場があって、公園があって、ミュージアムがある。そして人がいる。街全体が「自分の家」だと捉えれば、パリの全体に「住む」ことができるわけです。自分のアパートには何もなくても、街のワイン屋は自分のセラーと同じだし、行きつけのカフェやレストランのシェフは自分のシェフだし、アートが見たければ美術館に行けばいいし、そうやってパリ全体を、延長された自分の家にできる。エッフェル塔も含めて、パリが提供するものを全部私有財産にできたとしてもひとつも面白いことはないわけです。みんなのものであって自分のものでもあるからこそいい。パリならパリという都会がもっている文化施設を自由に誰でも利用でき、ともに享受できるところに都会暮らしのいいところがある。OCA TOKYOは、そんな意味で「都会暮らし」のいいところを、ミニチュアなスケールであったとしても、提供できるのではないでしょうか。パーソナルでもありコミューナルでもあるセラーがあったり、シェフがいたり、ミュージアムやシアターがあったりする場所としてOCAがある、ということでしょうか。自分のアパートには人を招けなくても、OCAに招いて、パーソナルな時間を大切な人と分かち合う、ということができる空間になれるのではないか、と期待しているところです。そうなったら、三畳一間の小さな部屋に引っ越すかもしれないな(笑)。

多様であることを、当たり前にしよう。

プライベートクラブというと格式が高くてどこか閉鎖的なイメージがありましたが、OCA TOKYOなら自分より若い世代の子とも一緒に行けると思いました。例えば、長年仲良くしている大学生の友人。彼女とここを訪れても良さそうです。若い人の視点や価値観でこの場所をどう感じるかも知りたいですし、お互いに刺激を与え合える気がします。「大人って素敵だな」と思ってもらえたら嬉しいですね。

こんなカッコいい場所に友人を連れて来たらちょっと尊敬されそうですよね(笑)。OCA TOKYOはわかりにくい場所にある小さな入口からすでにワクワク感があるので、いつもとは違う楽しい時間になると思います。

── 最後に、それぞれが思う「人生を謳歌している人」について語っていただきました。

人生を謳歌している人、まさに鈴木さんや申さんじゃないですか。お二人とも共通して、自分のことをわかっていて、その上で自分を大切にしている気がします。

いえいえ、ありがとうございます。自分を大切にすることで、きっと自信は身に付きます。他人からの評価を気にせず、自分を好きでいられる行動や、自分にとって心地いい選択が、人生の謳歌につながるのかもしれないですね。

まずは、生きていることが大事ですよね。死んだら謳歌できないから。僕は、今回の座談会を通じて頭をよぎったのは、「ユニバース(universe)」と「ダイバース(diverse)」という言葉。ユニバースは「uni(一つの)」と「verse(向きを変える)」から成り立つ言葉で「宇宙/万物/全世界」という意味を持っています。一方、ダイバースは「dis(異なる)」と「verse(向きを変える)」で「多様性」という意味です。OCA TOKYOでは、ダイバースから生まれるユニバース、多様なことを当たり前にしていくことが大切だと思いました。この施設を「人生を謳歌できる場」にしていくためにも、メンバーがお互いに刺激し合いながら、独自の文化を育てていきたいですね。

澤田 真弓

メディフォン株式会社

グーグル株式会社を経て2014年に遠隔医療通訳サービス「メディフォン(mediPhone)」を立ち上げ、代表取締役CEOに。24時間29言語対応で、全国の医療機関に電話やオンラインでつながる医療通訳サービスを提供。病院やクリニック、薬局、保健所だけでなく、外国人従業員が働く一般企業にも利用が広がっている。

申 真衣

株式会社GENDA

ゴールドマン・サックス証券株式会社を経て、2018年に株式会社ミダスエンターテイメントを共同創業。2019年に代表取締役社長に就任。2020年に現社名に変更。光文社「VERY」の専属モデルとしても活躍し、「シンマイ」という愛称で仕事と育児を両立する女性たちから熱い注目を集めている。

鈴木 正文

スズキ・コーポレーション

編集者/自動車評論家。自動車雑誌「NAVI」の創刊に携わり、2000年に「ENGINE」の初代編集長、2012年から「GQ JAPAN」編集長を務める。政治・社会・文化という3つの観点から、常に社会情勢に関わる活動を行ない、独自の編集方針を貫きながらメッセージを発信している。

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