OCA TOKYO BLOOMING TALKS 019

料理で分かち合えるもの

Released on 2021.11.26

OCA TOKYO 限定WEBメディア

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

今回は、OCA TOKYOのプライベートキッチンを使ったOCA TOKYOのメンバーのお二人の料理対談。元ラグビー日本代表キャプテンであり株式会社 HiRAKU代表の廣瀬俊朗さんと、一般社団法人 日本ガストロノミー協会を主宰する柏原光太郎さんが、それぞれ作った料理を振る舞いながら、食にまつわる様々なお話をしていただきました。

食べることも、トレーニングでした。

ラグビー選手だった僕にとって「食」は、現役時代と引退後で大きく変わったところがあります。まず、現役時代の話からすると、楽しく味わうことが心からできてなかったですね。

やはり、ご自身の体調や選手としてのパフォーマンスに影響しますよね。頭の中では、この栄養素をとるためにこの食材を食べないといけないといった意識はあるのですか?

ある程度、ありますね。どんな食事を・いつ・どのくらい食べるのか、といった管理をしながらベストな体調にして、練習や試合に臨みます。サプリやプロテインも摂っていましたし、体脂肪率が高いと指摘されれば炭水化物も制限する。食べないと痩せるタイプだった僕にとって食べることは、言ってしまえばトレーニングの1つでしたね。

食べることが、トレーニング。自分の体のパフォーマンスに直結しますし、まさにアスリートならではの感覚ですね。ラグビーを始めた少年時代や、部活をしていた学生時代の廣瀬さんは、どのような食生活だったのですか?

基本的には、母親の作る家庭的な料理を食べていました。特別なことはしていなくて、いわゆる部活に励む体育会系男子そのものというか。午前中に早弁して、昼は学食で食べて、部活の帰りにコンビニでおにぎりを買って食べるといった感じでしたね。

現役を退いてからは、どのように変わりましたか?

大きな変化では、食べる量が圧倒的に減りました。あと、食事がだいぶ楽しくなりました。これは嬉しいことです。現役時代は罪悪感があって食べていなかったスイーツを、「今日は、まぁいいか」と言って食べたり。料理をすることも好きなので、時々作って楽しんでいます。

「食」の魅力は、もっと広げられる。

柏原さんの作るお料理は、趣味の域を超えているとお聞きしていますので、実は今日の対談をとても楽しみにしていました。活動されている日本ガストロノミー協会についても教えていただけますか?

ありがとうございます。私は文藝春秋に勤めていまして、弊社が1967年から出版してきた『東京いい店 うまい店』の編集にも携わってきました。そんな経緯から、食に関わる人たちとのつながりが広がっていき、仲間たちと料理を作って食事を楽しむための場として、2018年に日本ガストロノミー協会を立ち上げました。

そのアイデアは、どこから生まれたのですか?

スペインのバスク地方のサンセバスチャンという町があるのですが、そこに今から100年ほど前にできた、今も現存する社交倶楽部「SOCIEDAD GASTRONOMICA(美食倶楽部)」がアイデアの下地になっています。サンセバスチャンは「食」を起点にして町おこしを成功させた町として有名ですよね。

バスク地方はラグビーの遠征で行ったことがあります。バルがあちこちにあって、料理がとても美味しいところですよね。

おっしゃる通り、すでに美食都市として世界中から認知されていますけれど、その下地を作ったのが美食倶楽部と言われているのです。もともとバスク地方は、女性が強く「厨房は女性のものだ」という価値観がある地域です。男たちは料理が好きでも厨房に入れなかった。そこで、仕方なく男たちだけでキッチンのある場所を借りたのが始まりだそうです。

それは知らなかった! 地域にある歴史的な背景を聞くとまた面白いですね。

そういった美食倶楽部が今や150くらいあるそうで、基本的には、料理を楽しもうとする素地がある街です。今ではバスク・クリナリ―・センターという世界初の「食」の大学があるほどですから。サンセバスチャンは時間をかけて、食べ歩きだけではない食の魅力を切り拓くことができましたが、東京も同じように、食の魅力を広げていける可能性があると思っています。

日本ガストロノミー協会では、これまでどのような活動をされてきたのですか?

料理が趣味の人で楽しむこともあれば、例えば中華料理のプロをお呼びして、一緒に餃子を作ったり、生産者をつないで地鶏とブロイラーの違いを教わったりといったイベントも開いています。地方自治体と連携して地方の食材をPRしながら料理をするということもやっています。

食材のルーツを知る貴重な機会になるし、人と人とが料理をしながらつながるのも素敵ですね。本格的な料理はできない僕でも、足を運んでいいものですか?

ぜひぜひ来てください。料理の腕なんて気にせずに。料理に関心があっても、上手じゃないとダメなのかな、出来合いの材料を使うと怒られるのかな、と委縮する方もたくさんいます。僕は、合わせ調味料を使った中華も立派な料理だというスタンスです。まずはそこから始まって、自分がよく行く中華料理屋の味はもっとオイスターソースが利いていたとか、紹興酒を加えてみたらいいかもしれないと、探求していけば楽しいでしょう?

そうですね。それを聞いて安心しました(笑)。

料理とコミュニケーションの関係。

柏原さんのご活動の話を聞いていると、日本代表のときに取り入れていたチームソーシャルという活動のことを思い出しました。選手、コーチ、マネジメントスタッフなど8人くらいのグループに分かれて外食に行き、料理を囲みながらラグビーとは関係ない話をして過ごします。すると翌日の練習の雰囲気が良くなったり、チームの結束が深まったりするんです。

それって、食の本質のようなお話でとても面白いですね! 私たちも月に一度「英語でワイワイ」という、都内在住の外国人の方にそれぞれの国の料理を作って英語で語らうというイベントをしているのですが、各国の料理があることで会話がすごく弾むんです。自然と国ごとの文化や習慣を知ることもできます。廣瀬さんのお話にも共通しますが、食事を囲むことや、料理の時間を分かち合うことは、改めて価値があることだと思いますね。

廣瀬さんは現在、どんな「食」に興味を持っていますか?

今は味噌ですね。もともと現役時代から味噌は好きでしたし、遠征先で飲む味噌汁はインスタントだったとしても格別でした。植物性のたんぱく質が豊富で、日本人の体にも合います。あとは地域性が豊かなところも面白い。僕は関西人なので雑煮は白みそで食べるのですが、それだけでも会話が盛り上がるしアットホームな気持ちになります。最近、味噌を食べる人が減ってきているようなので、何かしらアクションを起こしていきたいと動いているところです。柏原さんは、いかがですか?

SDGsの流れから、大豆ミートには関心があります。最近のものは手が込んでいて目隠しをして食べるとお肉と区別できないものもありますね。特に中華やエスニック系の味付けにすると全然わかりません。あとはフードロスの問題。やはりサステナブルに食を楽しむために考えなくてはいけない課題ですが、最近では若い料理人が率先して行動を起こしていて、フードロスを防ぐためのレストランを出したりもしています。単純に自分が儲かることよりも、食の未来を考えている料理人が増えてきたと思いますし、そういった方とのお話は、つくづく勉強になりますね。

「セレンディピティ」を味わえる場所。

僕が作ったのは、アスリートの朝ごはん。特製トーストには現役時代に好きになったベジマイトを塗っています。ベジマイトは、様々な野菜を発酵させた食品。見た目はチョコペーストですが、八丁味噌のような味です。塗りすぎないのがポイントですね。

ベジマイトはアクセントになっていて美味しいですね。スムージーには甘酒が入っていますし、味噌もそうですが廣瀬さんのテーマは「発酵」なんですね(笑)。

まさに。発酵食品って、時間をかけて美味しさがつくられていきますよね。きっと人と人との関係においても重要なキーワードのような気がしています。味噌ドリンクもいかがですか? 有機味噌をただ溶いただけですが。

本当に溶くだけでこんなに美味しくなるなんて、朝の目覚めの1杯にも良さそうです。

時々レモンを絞って飲むこともあります。体のコンディションを整えてくれますから。柏原さんの料理も作っているときから美味しそうでした。

これは「豚肉とアサリのアレンテージョ風」というポルトガルの家庭料理です。

うわぁ、これはちょっと美味し過ぎる…。豚肉とアサリがこんなに合うなんて。

僕も初めてこの料理を食べたときに、廣瀬さんと同じように感じました。今回、何を作ろうかと考えた結果、OCA TOKYOの良さでもある「セレンディピティ」を料理で体現したいと思ったんです。思いがけない組み合わせから生まれる美味しさを、ここで分かち合いたいなと。ところで、廣瀬さんは、OCA TOKYOをどのように使っていきたいですか?

実は、今日も午前中にOCA TOKYOで仕事の打ち合わせをしたところなんです。東京駅からのアクセスが良く環境もいい。打ち合わせのテーマがクローズドな内容だしても、ここなら気兼ねなく話ができるので、お連れしたお客様も喜んでくださいました。

リモートワークする場所としてもいい環境ですよね。それに、東京駅から歩いてすぐのところに、今回のようなプライベートで使えるキッチンがあるのは嬉しいかな。それ以外にも、会議をしたり、体を動かしたり、ブックバーで寛いだり、レストランで食事をしたり。キッチンを使ったり、カラオケを楽しんだりもできる。機能が充実しているからこそ、上手な使い方をこれから見つけていきたいですね。

僕はずっとアスリートでしたから、他の業界で活躍されている方から刺激を受けたいですね。また、アスリートのセカンドキャリアとして後輩たちのロールモデルになりたいという思いもあるので、アスリート出身の仲間たちと、そうじゃない人たちとをつなぐような場づくりができたらと思っています。

廣瀬さんをはじめ、OCA TOKYOのメンバーは多様なジャンルで活躍されている方たちばかり。そんな人たちに出会えることこそ大きな魅力ですね。やっぱり知らない世界の人と話せるって有意義ですから。個人的には、ビジネスに結び付ける必要がないところがありがたいですし、それもプライベートクラブの良さではないでしょうか。初めましての方もいらっしゃいますが、物怖じせずにメンバーの皆さんと楽しく関わっていきたいですね。

柏原 光太郎

株式会社 文藝春秋/一般社団法人 日本ガストロノミー協会

文藝春秋にて『東京いい店うまい店』編集長を務めた後、現在は同社新規事業開発局長として食のEC「文春マルシェ」をスタート、チーフプロデューサーを務める。2018年1月「一般社団法人 日本ガストロノミー協会」を設立、会長を務めるほか、地方再生への提言も積極的に行なっている。食べログ「グルメ著名人」(フォロワー50,000人以上)。

廣瀬 俊朗

株式会社 HiRAKU/元ラグビー日本代表

5歳からラグビーを始め、高校日本代表、U19日本代表を歴任した後、2004年、東芝ブレイブルーパスに入団。2007年に日本代表選手に選出され、2012年から2013年までキャプテンを務める。2016年引退。2019年に株式会社 HiRAKUを設立、経営管理修士(MBA)を取得。現在はスポーツの普及、教育、食、健康といったプロジェクトに取り組む。

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