OCA TOKYO BLOOMING TALKS 029

相手が一番、自分は二番

Released on 2022.03.18

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

インバウンド向けの旅行サービスをはじめ、映像制作やデザイン・マーケティングなど幅広いビジネスを展開されているOCA TOKYOメンバーのラフマン・アフラさん。外からも内からも日本を知るアフラさんだからこそ感じる“日本のおもてなし”の魅力や、今後の日本の在り方についての考え、そしてOCA TOKYOへの期待などについてお話を聞きました。

お客様に「ノー」と言わない。

── まずは、アフラさんが現在展開されている事業について教えてください。 映像制作事業20METERSと、ブランディングやデザイン事業HISUILABOの2ブランドからなる株式会社MAHAという会社を運営しています。その他、インバウンド向けに日本国内のプレミアムツアーを企画するJAPAN PRIVATE TOURや、高級車による送迎サービスを提供するTHE LUXURY FLEETなどの運営もしています。

── 数あるインバウンド向け旅行サービスの中でも、JAPAN PRIVATE TOURにはどのような特徴があるのでしょうか。 JAPAN PRIVATE TOURは、海外の方が日本で観光する際に、一般的な旅行代理店のツアーでは体験できない特別なプランや宿泊先などを提供していることが特徴です。例えば、相撲部屋で力士の方々と一緒に食事を囲んだり、寺院を貸し切って座禅体験を行なったり。お客様はいわゆる富裕層の方が多く、海外の芸能関係の方や政治家の方などもいらっしゃいます。もちろん戦略的な側面でそういった方々をターゲットにしてはいますが、そもそも私自身、旅行も日本も好きなので、仕事を通じてネットワークが広がっていくのはとても楽しいですね。

── JAPAN PRIVATE TOURのサービスが、富裕層の方々に喜ばれている一番のポイントはなんでしょう。 お客様に対して「ノー」と言わないことだと思っています。送迎に使う車はどのような車か、お部屋の窓はどの向きかなど、ディテールにこだわるお客様が多いからこそ、大前提として、そういったご要望に高いレベルで応える必要があるのです。どうしても実現できないご要望に対しては、必ず代案を提供することを心がけていますね。また、日本独自の文化や常識などを、言語の壁を越えてわかりやすくお伝えできることも我々の強みです。私自身日本に長く住んでいるので、お客様が何を求めているかという視点だけでなく、日本という場所が何を提供できるのかという視点からも様々なプランニングをできる点が、他のインバウンド向けサービスと比べても大きく異なるポイントだと思っています。

── 特にお客様から喜ばれているサービスなどはありますか? 日本国内には、個人で調べても辿り着けないレストランなどが数多くあるので、そのようなお店にご案内をしたり、行列ができる人気店を事前に予約させていただくことで、列に並ばず入店できるようにしたりするとすごく喜ばれますね。海外だとそもそも行列ができているという状況自体が少ないですが、日本のお店は人気店ほど行列ができていることが多いので、そういった側面からも特別感を演出できるというのは、日本のツアーならではの面白さかもしれません。

人生で一番長く住んでいる国、日本に思うこと。

── そもそもアフラさんが日本に住むことになった経緯についても教えてください。 初めて日本に来たのは3歳のときで、京都や富士山などを観光しました。母親いわく、当時から私は日本の食事をとても気に入っており、特にいくらが大好きだったそうです(笑)。また、幼い頃から日本のRPGゲームやポケモンが大好きでした。その後も何度か訪れていて、「いつか住んでみたいな」と思っていたのですが、実際に住むようになったのは、東京大学の大学院に行かせてもらった頃からです。その後、起業に至るのですが、思えば人生の中で一番長く住んでいる国が、ここ日本になっています。

── 今では日本のどのようなところに魅力を感じていますか? 食べ物の美味しさや治安の良さはもちろんですが、海外出身者として特に思うのは、差別がほとんどないことですね。他の国に住んでいたときには、アジア人というだけで厳しい言葉や仕打ちを受けることも少なからずありましたが、日本ではそのような経験をしたことはありません。どのような生まれやバックグラウンドであっても、必ずどこかに居場所があるのが日本だと思っています。そして、真面目な方や優しい方が本当に多いことも魅力だと感じています。逆に敢えて納得できないことを挙げるとすると、カラオケや旅館の料金が部屋単位ではなく人数単位であったり、ATMが日曜日の夜に使えなくなったりするところでしょうか。

── 日本で感動した体験として、具体的なエピソードがあれば教えてください。 日本人の方って、観光地で道を聞かれると、一生懸命にカタコトの英語で説明してくれたりしますよね。最初は「私の日本語ってそんなに下手かな?」と思ったのですが、そうではなく、一生懸命私に合わせてくれているんです。その気遣いがとても嬉しかったですね。目の前の初対面の人、しかも国籍が異なる人に対して自然と親切にできるというのは、実は珍しいことです。こういった価値観や心の持ち様は、単純な教育で身につくものではないと思うので、アジアの中だけで見ても日本はちょっと特別な気がしています。

── 日本人からすると、言われてみないと気づきにくいことかもしれません。 そうですよね。一番感動したエピソードで言うと、東日本大震災のときのことが思い出されます。交通機関が止まってしまい困っていたときに、自転車を貸してくれた見知らぬ方がいて。その方のおかげで、無事家まで帰ることができました。その他、街中の宿泊施設が困っている人に対して無料で部屋を開放していたり、電気屋さんがバッテリーを配っていたり。その光景を見たときに、日本は本当に優しい国だと思いました。目の前の相手を第一に考えて、自分を二番目にすることができる。それが日本の“おもてなし”のひとつの形であり、大きな魅力だと強く感じています。

本質的な“グローバル”を理解すること。

── 今後、日本が世界からより注目され、より愛される国になるためには、どのような取り組みや意識が必要だと感じますか? 海外の方々を受け入れる土壌を整える必要があると思っています。少し大きな視点でのお話になってしまいますが、昨今“グローバル化”を叫んでいる日本の企業は数多くあるものの、そのほとんどが、実は本質的な意味のグローバルには近づいていない気がするのです。

── そう思われるのはなぜでしょう? 例えば、「海外人材を増やしたい」「海外進出したい」と言っている日本企業はとても多いですよね。ただしそのほとんどが、海外の方の考え方や価値観、行動原理などを深く理解しておらず、結果として働きたいと思われる会社になっていないという事実があります。例えば、宗教的な理由で定期的な礼拝をしなければならない方に対して、日本企業の多くは、仕事の合間に礼拝に行くことを許してはくれないと思うのです。それが、ほんの2時間程度だとしても、です。その他、インバウンド向けのサービスやプロダクトの企画で言えば、「このコンテンツは海外の人が好きそうだよね」と、ステレオタイプなイメージで企画を進めようとする担当者なども、残念ながら多い印象があります。「それって結局どこの国の人のことを言っているんだろう?」「本当にその人たちは喜ぶのだろうか?」と、私は思ってしまいます。

── 相手のことを本質的に理解できていないケースが多いんですね。 単純に外国語で対応することだけが、グローバル化ではありません。より海外の人の考え方や価値観をリサーチして、多様なバックグラウンドを理解することが必要です。それさえできれば、本当の意味でのグローバル化は自然と加速していくのではないでしょうか。

今を大切に生きることが、人生の謳歌につながる。

── 今後のOCA TOKYOに期待することを教えてください。 OCA TOKYOメンバーの中にまだまだ海外出身の方が少ないと思うので、よりいろいろな国やバックグラウンドを持つ方が多く集まり、平等に出会い、楽しめる場所になればいいなと思っています。そのために、私にお手伝いできることがあれば、ぜひ協力したいですね。

── ご自身の視点で、「こんなことをしてみたい」と考えていることはありますか? 実は新型コロナウイルスがきっかけで、私自身、人や物事に対して「自分が何をしたいか」という価値観から「自分には何ができるだろう?」という価値観に大きく変化しました。それはOCA TOKYOという場所に対しても同じです。自分がここで何をしたいというよりは、OCA TOKYOのために、ここにいる方々のために、自分にできることを見つけたとき、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思っていますし、それがベストだと今は感じています。

── 最後に、アフラさんが“鮮烈に人生を謳歌する”ために大切にしていきたいお考えがあれば教えてください。 この2年間で当たり前の日常がいかに大切であるか、改めて気づかされました。もちろん新しい出会いも素敵で嬉しいものですが、それと同時に、家族や会社の近しい人、それ以外の今あるつながりを大切にして、「ありがとう」や「ごめんね」をしっかり伝えることを心がけていきたいです。きっとそれは、OCA TOKYOのテーマである“鮮烈に人生を謳歌する”ことにもつながっていくだと私は思っています。

ラフマン・アフラ

株式会社MAHA/株式会社JAPAN PRIVATE TOUR/株式会社THE LUXURY FLEET代表

1986年生まれ。インドネシア出身。幼少期は香港やインドネシアで過ごし、大学時代にはオーストラリアにあるカーティン大学にて建築過程を専攻。その後、東京大学大学院へ。在学中より事業構想を巡らせ、2014年に起業。インバウンド向けに日本のおもてなし精神を具体化する質の高い旅行サービスを提供しているほか、デザイン・マーケティング、イベント管理、高級車による送迎サービス、映像制作など、幅広い事業を展開している。

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