OCA TOKYO BLOOMING TALKS 033

時間の使い方と好奇心

Released on 2022.05.06

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

伝説の営業マン、事業立ち上げ請負人、講演のスペシャリスト、名誉利き酒師など。多才なご活躍を続けるOCA TOKYOメンバーの高城幸司さんは、一体どのように時間を使って活動されているのでしょうか? そんな疑問を率直に伺いながら、高城さんの時間に対する価値観に迫ります。

努力ではなく、成果のために時間を使う。

── まずは、“伝説の営業マン”とも呼ばれたリクルート時代、高城さんがどのように時間の使い方をされていたのかを教えてください。 常に考えていたのは、直接的な時間の使い方というよりも、自分のセールスポイントをいかに築くかということでした。そもそも社会人になりたての頃は、誰しもがやらなければならない仕事に追われているだけで、気づけば一週間が終わってしまう。そんなことも少なくないですよね。そこから抜きん出て大きな成果を上げるためには、自分のセールスポイントを持って、質の高い大きな仕事をしていくしかないと思っていたんです。“仕事の報酬は仕事”なんて言葉もありますが、まずは「この仕事はあいつに任せよう」と、言ってもらえる存在になれるかどうか。もちろん成果にこだわることが大前提ですが、大きな仕事を任せられるようになり、仕事の精度や生産性が上がっていけば、結果として時間の余裕にもつながっていくのだと思います。そうなれば、その余裕を他の仕事や営業活動などにも充てられるようになりますよね。

── 例えば当時、どのような営業活動をされていたのか教えていただけますか? そもそも成果を上げる営業とは、会社を多く訪問する営業ではなく、経営者に多く会う営業です。だからこそ当時は、経営者に直接会うことを特に重視していて、そのための努力をひたすらしていました。いちばんシンプルなのは、直接社長の家に行くことですが、もちろん突然行ったら怒られてしまいますよね(笑)。ですからまずは社長のお友達を探して、そこからつないでいただくということをしていました。また、リクルートの総務部に行って取引先リストを全部見せてもらい、取引がまだない会社に行って商談をすることもしていましたね。そんなことをしている営業が他にいなかった。だからこそ、数字的にも目立つ存在になっていけたのかなと思います。

── 他の方とは異なる営業スタイルをあえて貫いていたモチベーションは、どういったところにあったのでしょう。 正直なところ、リクルートの当時の営業スタイルに辟易していたんです。上司に対して、「今日は何件訪問しました」「そのうち何件が新規です」といった報告をすることに価値を見出せなかったというか…。営業として何よりも大切なことは、成果を出すことであって、努力をすることじゃない。そういった考えが根底にあったので「努力=美学」といったある種の古い考え方に違和感を覚えていたのでしょう。もちろん型通りの仕事も大切です。しかし、新しいことをやったり、切り拓いていったりする人がいないと、会社はそもそもダメになってしまうとも思っています。

時間を、過ぎ去るものにしない。

── リクルート時代と現在を比較して、時間に対するお考えや感覚に変化はありますか? 今は経営者になってしまったので、経営としての優先順位があるため必ず思い通りには進まないという大前提はありますが、大きく思っていることは2つあります。1つは、インプットのための時間をどこかにつくらなければ、心がどんどん荒んできてしまうということ。例えば一週間、毎日遅くまで仕事をしたり、毎日お客様と会食に行ったりしているだけだと、心身ともに疲れてしまいます。ですから今では自分のためのインプットの時間を、意識的に持つようにしています。

── では、もう1つのお考えとは何でしょう? もう1つは自分自身の好奇心を深掘りする時間を持つ、ということですね。私の場合、もともと歴史が好きなので、その時々で「歴史上にどういった人物がいたのか」を調べて掘り下げていくことが好きだったりします。最近注目しているのは、立花宗茂。個人的には、ゆくゆく大河ドラマで取り上げられる人物ではないかと思ってチェックしています。数年後、世間から注目されたときに「私は何年も前から注目していたんだぞ」って言いたいですね。

── そういったインプットの時間や、好奇心を深掘りする時間が大切だと感じるのはなぜでしょうか。 そもそも好奇心がなくなってしまうと、時間はただ過ぎ去るものになりますし、仕事もただこなすだけの作業になってしまうと思うのです。そうならないためにも、その時々で自分が気になっていることや関心があることに対してリサーチする癖を持つことはとても大切だと思います。目的を「仕事のため」にする必要は一切ありませんが、そういった時間を持つことが、結果として仕事につながることも決して少なくはないはずです。

── 忙しい中でそういった時間を確保するというのは難しくありませんか? コツとしては、先にアウトプットの枠を決めてしまうといいかもしれないですね。それが私の場合は、講演会やメディアへの出演であったり、本の執筆だったりします。あとは場所を意識的に変えることで、時間を確保するというのも効果的です。それこそOCA TOKYOのような場所に来て、その時興味のある物事を掘り下げたり、好奇心のある人とちょっと会話をしてみたりするのもいいですよね。

時間を楽しむものとしての日本酒。

── 名誉利き酒師としてのお顔も持つ高城さんですが、日本酒と時間という観点からも、お考えや想いなどがあれば伺えますか? 日本酒は基本的に長期熟成を前提としていないため、ワインやウイスキーなどとは異なり、基本的に製造されてから一年間で飲み切られるものでした。ただし最近では、日本酒でも長期熟成の過程で味わいの変化を楽しもうとする動きが出てきています。その背景には「最適温度はマイナス4度」といった、日本酒が熟成するための条件がだんだんと解明されてきた経緯があります。私自身、こういった新たな発見にはとても興味を持っていますし、OCA TOKYOの日本酒の熟成に絡めたイベントはとても楽しみにしています。

── ちなみに、OCA TOKYOにも「天賦」という日本酒が置いてありますよね。 「天賦」は、鹿児島の焼酎メーカーが造っている日本酒ですね。ご存知の通り、九州地方は焼酎が主流で、福岡県を除けばあまり日本酒を飲まない地域ですが、最近では焼酎メーカーが日本酒を造ることも増えているんです。面白いのは、暖かい地域のお酒は通常甘くて濃密な味わいになるところ、最近の九州産の日本酒は、新潟や兵庫のお酒にも負けない繊細な味のものが増えてきていること。そこに私は、各焼酎メーカーそれぞれの技術力を伝えたいという情熱や意地を感じるのです。

── 日本酒を取り巻く環境や楽しみ方が、大きく変わりつつある時代であると。 そうですね。とはいえ、そもそもの食中酒としての日本酒の楽しみ方というものも、これまで以上にしっかりコーディネートしていかなければならないと思っています。食事とともに楽しめるということは、そこにいる人同士の会話や、一緒に過ごす時間も楽しめるということ。そういった意味で、これからは“日本酒のある時間”の価値や楽しみ方をいろいろなコンテンツと組み合わせつつ、飲食店や酒蔵さんと一緒になって世の中に広めていくフェーズにあるのかなと思っています。

楽しませ、自身も楽しみ、謳歌する。

── 高城さんは、OCA TOKYOという場所にどのような魅力を感じていますか? いい意味でビジネスライクではないと言いますか、我が家に近い感覚で寛げる場所だと感じています。東京のど真ん中である丸の内に、このような場所があるのは奇跡ではないでしょうか。仕事ばかりしていると、いろいろと追いかけられることもありますが、それを一度クールダウンできる場所でもありますね。また、随所に散りばめられているアートや書籍なども相まって、個人的な好奇心がくすぐられ、なおかつ充電できる場所だと感じています。

── 今後、OCA TOKYOでやってみたいことなどがあれば教えてください。 先ほど申し上げた日本酒のイベントのように、私自身も何かしらテーマアップした食事会などをぜひやりたいと思っています。世の中の状況を鑑みながら、秋頃には実施できるようにしたいと考えています。あとは、Book Barや読書と絡めたイベントもぜひやりたいですね。現在進行形なのは、芥川賞・直木賞候補の作家を招いたトークイベント。こちらは講談社と打ち合わせしつつ企画を進めているところです。

── 最後に、高城さんが“鮮烈に人生を謳歌する”ために大切にしていきたいお考えがあれば教えてください。 楽しいことを仕掛ける側でいたいと常々思っています。大がかりなことでなくてもいいんです。例えば、食事会や飲み会を開催した際に、単に集まって終わるのではなく、そこに何らかのイベントやサプライズを用意したり、ちょっとこだわったお酒を用意したり。この日、この時間に「集まって良かったね」と思ってもらえるようなテーマにこだわることを大切にしていきたいですね。その上で重要になるのは、自分自身も楽しむということです。その場にいらっしゃる方々に楽しんでいただくことももちろん大事ですが、その場を準備する自分のことを好きでいたい(笑)。これは、人生を謳歌していく上でとても大切なエッセンスになると思っています。

高城 幸司

株式会社セレブレイン代表取締役社長

1986年に同志社大学文学部を卒業後、リクルート入社。新規事業の立ち上げをしながら、6年間トップセールスとなった“伝説の営業マン”。1996年には独立/起業の情報誌「アントレ」を立ち上げ、事業部長、編集長を歴任。3000社以上のベンチャー企業の経営者と関わり、創業支援プロジェクト「ドリームゲート」の立ち上げにも関わる。人材ビジネスの事業部門で責任者を経験後、2005年に株式会社セレブレイン代表取締役社長に就任。組織のマネジメント力向上、リーダー論、営業力などについて年間100回以上の講演実績あり。趣味は日本酒で、利き酒師協会の顧問も務める。

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