OCA TOKYO BLOOMING TALKS 036

学びたいならまず楽しもう

Released on 2022.06.03

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

ソニー、ディズニー、アップルなど、類稀なるビジネス経歴を持つOCA TOKYOメンバーの前刀禎明さん。現在も多様な活躍を続ける中、自身が広く提唱しているのが「ワンダーラーニング」という、楽しむことを大切にした学びの考え方。その真髄を、前刀さんの経験談や人生観、ときに冗談などを交えながら、楽しくお話ししていただきました。

まずは遊ぼう。それから学ぼう。

── 前刀さんがこれまでのキャリアのなかで得た学びや大切にしていることなどがあれば教えてください。 もともと僕は創業者が好きで、自分が働いたソニー、ディズニー、アップルなどの創業者ももちろん尊敬しています。彼らに共通するのは常に自分を高めていたこと。僕はこれを格好つけてセルフ・イノベーションと呼んでいますが、要するに成長し続けているのです。例えばディズニーには、キャストはゲストの期待を超えることが大切だよ、という意味で「Exceed Expectations」という言葉があるのですが、これを実現するために僕は「Exceed Myself」が必要だと解釈して今でも心に留めています。達成したことに満足して立ち止まるのはつまらない。だから、常に自分を超えていこう。そんな気持ちにしてくれる大好きな言葉です。ちなみに今日は、東京ディズニーランド30周年記念モデルの腕時計をしていますし、年代物のソニー製ラジオやミッキーマウスのオブジェなど、思い出のアイテムたちも身近に置いて大切にしています。iPadを持ったミッキーなんて僕のためにつくられたようなもの。ガラスのオブジェに刻まれたウィルト・ディズニーのメッセージ「You can dream, create, design and build the most wonderful place in the world...」も大好きです。結局のところ、物心ともにこれまでのキャリアが僕という人間を築き上げている気がしていますね。

── 前刀さんが直近の著書でも推奨しているワンダーラーニングについて教えてください。 受け身ではなく、楽しみながら能動的に学ぶ姿勢を表現した造語です。ポイントは「楽しむ」が先にあること。ずいぶん前からEducation(教育)とEntertainment(娯楽)を合わせたEdutainmentという造語があり、楽しみながら学ぶことの大切さは世間でも知られています。ただ、僕はそれだと「面白くない学びをなんとかして楽しもう」と言われている気がしてしまって。ワクワクすること、楽しむことが最初で、そこで経験したことが学びになるという順序の方がより自然ですし、そもそも学ぶことは楽しいことだと思うのです。

── 確かに楽しむことが先にあると、学びをスタートしやすい気がします。 「まずは遊ぼう」ということですからね(笑)。この考えは現在リリースしている3Dの立体パズルアプリ「DEARWONDER」にも通じています。「Play・Create・Share」というコンセプトで、まずパズルを楽しむ。そして自分なりに答えを考えたパズルを創り出す。最後にシェアして違う人の答えを知り、新たな発見に出会うといった具合に、ワンダーラーニングをうまく具現化したコンテンツだと思っています。

── 前刀さんが具体的に実践しているワンダーラーニングを教えてください。 新型コロナウィルスの影響でトレーニングジムが利用できない時期がありましたよね。そのときに、運動不足解消のために散歩を始めまして。そこで、道端の草花の観察が面白いことに気づきました。色や形の種類の多さであったり、見る角度によって印象がガラッと変わったり、見れば見るほど面白い。このように、楽しいこと、心が動くことは、身近なところにいくらでも存在します。よく「最近楽しいことあった?」と聞く人、多いですよね。あれ、正直僕にはよくわかりません。常に楽しんでいますから(笑)。そういった意味では、ワンダーラーニングにおいて「これは楽しそう!」「面白そう!」と気づく能力はとても重要だと思います。

固定観念の怖さを知った。

── 何でも楽しむ意識を持つことが苦手という人も多いイメージがあるのですが、何かコツみたいなものはあるのでしょうか? 大前提として、固定観念にとらわれないことです。「これはこういうものだ」と決めつけてしまうと、その時点で楽しくないし、新たな発見にも出会えません。よく話すのですが、例えば子どもと一緒に動物園に行ったとします。帰ってきて子どもが描いたキリンの絵を見ると、首が短い。これを見て「キリンの首は長いでしょ」と言って描き直させる親もいます。でも、実は檻の近くからキリンを見上げると、首が短く見える角度があるのです。子どもはそれを忠実に描いただけ。この場合、親はまず「なぜ短いの?」と聞くべきですね。ひと言「なぜ?」が言えれば「そういうことか!」の発見が楽しめるし、学びにもなる。ですから、「なぜ?」という言葉を常に使えるよう心がけておくといいですね。

── 昨今、生涯学習やリカレント教育など、社会人の学び直しが注目されています。新しく学ぼう、挑戦しようとしている人たちに向けた助言などはありますか? 僕の成功と失敗についての考え方を紹介したいです。世の中は基本的に、想定内に収まることを成功と呼び、逆に想定外は失敗とみなします。でも考えてみてください。想定内の結果が出ることは、新しい学びがないことと同意です。想定外の「なんだこれ!?」こそが新しい発見であり、学びであり、成長だと思うのです。そんな気持ちでチャレンジしてみてはどうでしょうか。

── 失敗のお話が出ましたが、前刀さんにはあまり失敗のイメージがありません。ご自身の失敗談などはお持ちですか? もちろん! 僕はこう見えて失敗ばかりの人生ですよ(笑)。なかでも大きかったのは、やはりライブドアの民事再生の件です。立ち上げ当初は順調だったのですが、ある日の取締役会で突然僕が会長に棚上げされ、アメリカ人社長が抜擢されることに。しばらくすると悪い予感が的中しました。成長を追うあまり、明らかに社員を採用しすぎたのです。すぐに社長に戻してもらい、手を打ちました。社員を半分程度にする必要があり、一人ひとり面談して頭を下げ、ようやく軌道に戻る目処が立ったタイミングで、今度は主要取引先のワールドコムが経営破綻したのです。

── 世界最大手の通信会社が経営破綻するなんて…。 まさかの出来事です。日本で言えばNTTが倒産するようなものです。ある意味ここで「固定観念は捨てるべき」と強烈に学ぶことができました。会社は民事再生手続きに入り、結局再度全社員に頭を下げ、日々彼ら彼女らの再就職先を必死に斡旋して、おまけに営業譲渡先の入札をめぐって無実の罪で訴えられて…。謎の皮膚病も患いましたし、メンタルも相当やられました。取引先にも謝罪をして回る日が続きましたが、その中の1社からいただいた言葉が今も胸に響いています。直接謝罪に行けず電話連絡だったのですが、役員の方から「いつも誠意を持ってやってもらっていたので、なんとか乗り切れるように頑張ってください」と言われました。電話を切った瞬間、ドバーッと自然と涙が溢れ出てきて…。言葉にできないほど多くの学びが詰まった出来事でした。

取り組む理由は、面白いから。

── ビジネスで壮絶な経験をお持ちの前刀さんですが、最近は特に若者との活動も積極的ですね。 最近は子どもたちのキャリア教育の一環として講演などをすることが多く、その流れもあります。例えば直近だと、三田国際学園で先ほどお話ししたアプリ「DEARWONDER」を活用しているサークル「nexus」を一緒に立ち上げてサポートしています。基本的には生徒主導で、アプリの活用方法から活動内容、サークルのビジョンなども話し合って構築していきました。世の中的にはアクティブラーニングと呼ばれる類のものですね。

── やはり若い人に経験を伝えたいといった思いがあるのでしょうか? それが、まったくないんです(笑)。若い人にはよく言っています。「君たちのことを育てようとは1ミリも考えていない。ただ、一緒に育つのはアリだし、僕は絶対に負けないよ」と。僕が若い人たちと時間をともにするのは、ビジネスとはまったく違った経験ができるから。つまり、単純に面白いから続けているだけなんです。

── 直近で前刀さんが前のめりで取り組んでいるプロジェクトがあれば教えてください。 現在注力しているのは、新しいアプリの開発ですね。iPadでログインすると、まず無限に広がる白いキャンバスが現れる。そこに手書きで文字を書くとAIが認識し、画像を検索。フワフワとアイデアが浮かぶかのように次々と画像を表示してくれます。画像は好きなだけキープできますし、空いている場所でいくらでも同様の検索ができる。もちろんメモや矢印、イラストなどの記入も可能。マインドマップのようなルールもなく、もっと自由にイマジネーションが広がり、アイデアが可視化されていきます。他に類を見ない革新的なものですよ。

── フワフワと表示される画面が、何かしら感性を刺激してくれそうですね。 ありがとうございます。まさにそれを狙っていて、まずは「Play」。たくさんのビジュアルを楽しみます。それをもとに発想をまとめていくのが「Create」。またキャンバスを「Share」すれば、何人でもリアルタイムで同時操作が可能です。つまり、既存アプリである「DEARWONDER」のコンセプトを継承したものです。アイデア出しのオンラインミーティング、または子どもの探究学習などで役立つと考えています。さらにこのアプリは、検索や書き込みのプロセスを後から動画のように見返すことができます。例えばクリエイターが使用することで、その作品がどんな製作プロセスを経たのかに価値を示すことができれば、NFTなどでも需要があるのではと考えています。すぐにそこまで行かないにしても、まずは多くの人の発想を豊かにすることに貢献できれば嬉しいですね。

素敵な人たちと、適度な距離感で。

── 前刀さんはOCA TOKYOはよく利用されるのですか? また、OCA TOKYOに期待することや、やってみたいことはありますか? そうですね、使うときは連日訪れますね。特にお気に入りなのは、5階のOcafeのラウンジにある席。あと6階のBook Barも雰囲気が良くて好きです。OCA TOKYOは、ふらっと立ち寄ったときに思いがけず知り合いに出会えるのが楽しいですね。ただ、相手が仕事中だと話しかけるのも遠慮してしまいがちなので、先に紹介したアプリのワークショップのような、メンバーの皆さんとワイワイ語り合える参加型のイベントを開催できたらと思っています。価値観を共有し、一緒にクリエイティビティを高めたいです。

── 前刀さんは、人生を「謳歌」するためにどんなことを心がけていますか? 常に大切にしているのは、明日の自分には無限の可能性があるという思いです。冒頭お話しした「Exceed Myself」にも通じるのですが、固定観念に縛られず、とにかく日々面白がって生きる。だからこそ発見があり、成長にもつながる。そして大事なのは、どこまでも続けていくこと。ウォルト・ディズニーは「ディズニーランドは永遠に完成しない。この世界に想像力が残っている限り成長し続ける」と言っています。人間も同じで、僕自身も完成しないからこそ、日々楽しめているのだと思います。ディズニーランドは、ずっと楽しい場所です。その楽しさは、僕が語るまでもないですよね。

前刀 禎明

株式会社リアルディア

ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー、AOLを経て、ライブドアを創業。後にアップル米国本社副社長兼日本法人代表取締役に就任。現在、株式会社リアルディアの代表としてラーニング・プラットフォームの開発を中心に、コンサルティングや書籍の執筆、各種講演から学生とのプロジェクトなど精力的に活動を続けている。最新著書は『学び続ける知性 ワンダーラーニングでいこう』(日経BP)

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