OCA TOKYO BLOOMING TALKS 041

より良い選択を、自分らしく

Released on 2022.07.15

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

企業の代表として、子を持つ母として、雑誌モデルとして。シンマイという愛称で注目されることも多い、OCA TOKYOメンバーの申真衣さん。仕事とプライベートを両立させるためのコツから、社会の多様性やジェンダー観など、今の時代らしいテーマで申さんの思いをお聞きしました。

ひとつの専門性だけに頼る人生は、狭い。

── 申さんが代表を務めるGENDAではどんな事業を展開しているのでしょうか? エンターテインメント全般を事業領域としていて、この業界で世界一になることを目指しています。先般ご縁があり、ゲームセンターの運営を手がける株式会社セガ エンタテインメント様にグループ入りいただき、現在はその領域に力を入れています。

── 金融業界に長くいらっしゃいましたが、エンタメ業界のどこに魅力を感じていますか? ゲームセンターのようなリアルな遊び場に魅力があると思っています。もしかすると、あらゆるエンタメがモバイルやオンラインに置き換わり、リアルの遊び場は衰退しているように思うかもしれませんね。しかし実は、コロナ前までこの業界はずっと右肩上がりで、市場規模もそれなりに大きい。なおかつ大手が寡占していないところも可能性を感じています。

── 経験のない業界への挑戦に、ためらいや不安はなかったのでしょうか? 金融の世界で11年働いて、それなりに専門知識は得られた実感はあります。ただ、その専門性だけを頼りにこの先も働き続けるのは、なんかこう…狭い気がして。人生は長いですし、キャリアをずっと続けたとすれば、50年や60年になります。それなら、例えば10年ずつ新しいことを学ぶことができれば、多方面でエキスパートになれる。そう考えていたので、異業種への挑戦はむしろ非常に前向きに捉えています。

── 日々新しい挑戦が続いていると思いますが、なかでも今どんなことに力を入れていますか? 先のM&Aもあり、一気に社員数が増えたため、どう組織としてまとめるかが大きな課題のひとつです。当然のことですが、私より業界歴が長く、エンタメのことが好きで、「セガ」に愛着を持っている社員の方も多い。だからこそ社員の皆さんとのすれ違いが起きないようにしたいんです。ですから常にリスペクトしながら、誠実に彼ら彼女らの意見を聞くようにしています。

すべてを自分でやろうとしない。

── 現在2児の母としても忙しい日々を送っていらっしゃいますが、仕事と家庭の両立という面ではどうバランスをとっていますか? 「17~20時までは家族と過ごす時間」と決めて、なるべく時間で区切るようにしています。もちろん、家族と一緒にいるときにスマホにチャットやメールで連絡が来ることもあります。でも最近はそこで返事をしようとすると、子どもから「スマホ置いてよ」と注意されるんです(笑)。完璧に区切ることは決して簡単ではありませんが、意識の上ではより厳密に、仕事とプライベートを分けるようになってきたかもしれません。

── 家庭や子育てにおいて心がけていることはありますか? 優先順位をつけて、自分じゃなくても良いものはなるべくアウトソースすることにしています。家事で言えば料理をお願いするのはハードルが高いけど、掃除ならもう少し気軽にお願いできる。子育てで言えば本の読み聞かせは自分でしてあげたいけど、ひらがなを教えるのは塾の先生でいいかな、とか。もちろん人に頼むとお金がかかります。でも、すべてを自分でやろうとすることで体や心が疲弊し、家庭や仕事に影響が出てしまうのであれば、その方が損失は大きいと思うんです。アウトソースする時間をリフレッシュにあてることで自分がずっと笑顔でいられるのであれば、夫婦仲など家庭内にとってもプラスになることは多いのではないでしょうか。

── やりたいことや時間の使い方などを、とことんロジカルに考えて決めているんですね。 そうかもしれないですね。それで思い出したのは、私は子どもの靴を最初に全サイズ買ってストックしています。この話をすると、面白がられたり驚かれたりするのですが、私としてはサイズアウトするたびに買うより1回の買い物で揃えてしまおうと思ったんです。子どもは成長が早いですし、買い物を楽しめる年齢でもないですからね。もちろん、楽しい買い物にたくさん時間を使うことは有意義だと思うのですが、そうでなければ時間をかけないほうがいいですよね。

── とてもユニークだと感じたのですが、ご自身の思考や行動の源泉となっている信念みたいなものをお持ちなのでしょうか?
10年以上前に読んだ「選択の科学」という本が、ひとつの指針になっています。著者は盲目のインド人女性で、コロンビア大学ビジネススクールの教授です。彼女の経験と研究から、人間はあらゆる「選択」の場面でどんな行動をとるのか、が書かれています。そこから学んだのは、選択の時点で偏見や思い込みを持たないことや、人間はつい不合理な選択をしてしまいがちなので、冷静な判断が求められるということ。これを読んでからというもの、自分が大きな選択をする際には、どんな前提条件でこう思うからこの選択をした、といった記録を残すようにしています。もし将来的に選択を間違えたと感じたときに見返せば、どんな要因で自分が間違えたのかがわかる。そうすれば、その反省を次に活かすことができます。人生は選択の連続なので、納得がいく選択を重ねることで、人生をより良いものにしたいと思っています。

冒険ばかりの男の子と、助けを待つだけの女の子。

── モデル業に関しては、どのような思いで取り組まれていますか? なんとなく誘われたことがきっかけで始めましたが、今は私がメディアに出ることによって、女性の生き方の選択肢の1つを示すことができればと思っています。私の友人、知人には、同じく家庭を持ちながら第一線で活躍している女性が何人もいます。でも、世の中的にはそういう人は圧倒的に少ないし、実現するのも難しいと思われている。私は「女性がキャリアを築くことは難しい」という考えは、完全に幻想だと思っています。社会インフラだけ見れば、日本はアメリカよりも集団保育が進んでいる国なので、仕事と子育ての両立がしやすい環境とも言える。結婚や出産で昇進ができないとか、女性の方が家事を多くやるとか、社会的な先入観やプレッシャーに阻まれている部分が大きいような気がしています。

── 昨今はジェンダーバランスの問題が各所で多く扱われていますが、まさにそんな社会課題と正面から向き合っている印象ですね。 そういうことなのかもしれません。「この仕事は女性、もしくは男性が向いている」といった、性別と職業の話があると思いますが、私は基本的に、男女でできることに差はないと思っています。誤解を恐れずに言うと、その差って、社会的につくられた偏見なのではないか?とも…。例えば、絵本の中で冒険するのは決まって男の子。女の子はきれいなドレスを着て助けられるのを待っているだけ。そんなお話が世界に山ほどあるんです。小さい頃から、様々な角度でそんな先入観を植え付けられていったら…。嫌でもジェンダーに対する偏見を持ってしまいますよね。

── 確かにおっしゃる通り、ジェンダー観は「つくられたもの」なのかもしれませんね。 大学生のメンターをしていて彼女たちと時々話すのですが、残念なことに、今の女子学生も私たちのときと同じように「結婚や妊娠するときのことも考えて職業選択をしている」と言うのです。備えを持つことは非常に大事だと思う一方、そんなこと考えて就職活動している男子学生って聞いたことがありません。この時点で女子学生はキャリアの選択肢が狭くなっていて不公平感が否めない。もちろん、男女関係なく誰もがその人らしさを発揮できる世の中になればいいなと思いますが、これも根が深い問題なので、すぐに解決するのは難しいかもしれないですね。

── 近年は「多様性」がひとつのキーワードとして多くの場面で語られるようになっています。多様性に富んだ社会の実現に向けてどんな考えをお持ちですか? フレキシブルなキャリア形成や働き方をもっと推奨していくべきだと思います。今は働く年数が長くなっているのに加えて、時代の変化のスピードが早くなっている。つまり単一のキャリアや働き方だけでは時代の変化に適応していくことがより困難になっているのです。今はその過渡期にあって、例えばエンジニア職は転職によってどんどんお給料が上がる状況になっていて、ひと昔前に「頻繁に転職するのは良くない」とされていたのが嘘のようです。より多くの人が幅広いスキルや経験を得ておけば、それだけ自分の働きたいバランスで働ける人が増え、社会の多様性につながるのではと思います。

身近な幸せに気づき、それを積み重ねていきたい。

── 普段はOCA TOKYOをどのように利用されていますか? 会社や生活圏と少し距離があるので頻繁には利用できていませんが、先日ここで知り合いを含めた数人とディナーをご一緒しました。そうやってどんどん出会いの輪が広がっていく、刺激がある場所だということを実感しています。現在オフィスの移転準備中で、その後はOCA TOKYOが近くなるので、もっとたくさん利用しようと考えています。

── 人生を謳歌するために大切にしていることを教えてください。 一般的な幸せではなく、自分が本当に幸せだと思うことは何だろうと、日々自身に問いかけるようにしています。誰かの幸せと自分の幸せは、実は全然違う。だけど、人はどうしても世間的な幸せをつい追いかけてしまいがちです。大切なのは、その都度立ち止まって「これは本当に自分が望んだ幸せなのだろうか?」と考えること。自分の幸せがしっかり定義されると、実現できることは意外と多いと感じています。

── ご自身にとっての「幸せ」とはどんなことなのでしょうか? 実は、自分が幸せだと思うことを書き出してみたことがあります。すると、ご飯が美味しい、緑が見える、天気がいい…、など意外と小さなことで幸せになれることがわかりました。あとは、仕事の後のビールなんて最高ですよね(笑)。たとえ嫌なことがあっても「これはビールを美味しくするためのプロセスだ」と前向きに捉えれば、ほどよいストレスは幸せに通じているとも言える。特に私は生涯仕事を続けていきたいと思っている人間なので、大切な要素です。そして、やっぱり家族が笑顔でいられること。このように身近な幸せをコツコツと積み重ねていくことこそ、人生を謳歌するということなのだと思っています。

申 真衣

株式会社GENDA

ゴールドマン・サックス証券株式会社を経て、2018年に株式会社ミダスエンターテイメントを共同創業。2019年に代表取締役社長に就任。2020年に現社名に変更。光文社「VERY」の専属モデルとしても活躍し、「シンマイ」という愛称で仕事と育児を両立する女性たちから熱い注目を集めている。

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