OCA TOKYO BLOOMING TALKS 042

しなやかに、思いを貫く。

Released on 2022.07.29

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

早稲田大学在学時にフレンチトースト専門店「forucafe」を立ち上げ、日本初のブリュレフレンチトーストで一躍のブームを生み出すほか、以降も食の仕掛け人として活躍するOCA TOKYOメンバーの平井幸奈さん。2020年にはご出産を経験し、母親としても新たな一歩を歩み始めています。経営者として、そして母親として邁進する平井さんの感性や原動力に迫りつつ、今後のビジョンなどについてもお話を伺いました。

一次的ブームではなく、日常に溶け込むお店へ。

── まずは平井さんの自己紹介も含めて、「forucafe」の立ち上げから現在に至るまでのお話を聞かせてください。 forucafeは、2013年3月に、1ヶ月に1度の日曜日限定カフェとしてスタートしました。当時の私は大学3年生で、きっかけになったのはシドニーでのワーキングホリデーです。“世界一の朝食”を提供するお店としても有名な「bills」というレストランで働かせてもらっていたのですが、お客様を自分の家に招き入れるような空間と料理にとても感銘を受けて。そこから「私もこんなお店をつくってみたい!」と思うようになり、帰国後に「forucafe」を立ち上げました。もともとは日本初のブリュレフレンチトースト専門店としてのスタートでしたが、2014年8月に株式会社フォルスタイルとして法人化してからは、黄金比グラノーラ「FORU GRANOLA」、ドラフトコーヒー「FORU COFFEE」といった新商品の開発や、ケータリング事業なども展開しています。

── ちなみに、平井さんが「この商品はいける!」と思うのはどんな瞬間なのでしょうか。 これまでは、自分自身の体験をもとに半ば直感で判断していました。例えば、シンガポールの催事に出店してグラノーラを販売していたとき、同じ会場でビールサーバーを使ってコーヒーを販売している男性がいたんです。これが驚くほど美味しくて「日本に持って帰りたい!」と思って商品化したものがFORU COFFEEです。そうやって「これが日本にあったらいいな」「これなら売れそうだな」と思うものを商品化していくのが、当初の私のスタイルでした。ただ、この考え方も最近は変化してきています。「この商品ならいける!」とか、「この商品をメディアに露出してとにかく話題にしよう!」といったある種“一発屋”のような売り方からは脱却しなきゃいけないと思うようになったんです。

── なぜそのように考えるようになったのですか? もちろんメディアに露出をすれば一時的なブームになって売上は上がります。しかし結局は、時間が経つにつれて注目度が下がり次のブームをつくることに追われてしまいがち。それは飲食経営の本質ではありません。きっと私たちが目指すべきなのは、forucafe本店のある早稲田界隈でも見かける、地域に根差した人々の日常に溶け込むような定食屋やお弁当屋さんではないか。そんな考え方になってから、最近ではお弁当やカレーなど、より日常的なメニューを取り入れていますし、店舗によっては週替わりのデリも提供しています。その結果、地元のリピーターの方がじわじわと増えてきているのは嬉しい変化ですね。

起業してから10年目。経営者として思うこと。

── 学生起業家としてスタートして10年目を迎えていますが、これまでを振り返って率直なお気持ちはいかがでしょう。 まず、起業を決意したとき、両親から「大学まで行ったのに、喫茶店をやるのか?」と半ば反対気味に心配されたことを覚えています。それでも大学時代に起業したことは多くのメディアでも取り上げられ順調なスタートを切るのですが、最初のうちはフレンチトーストが美味しいお店ではなく、若い女子大生がやっているお店として注目されていた気がします。当時は「もっと商品を見てほしい!」と思っていましたね。お店の内装を変えたり、商品のクオリティを上げたり、オペレーションを強化したり…。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ商品を好きになってくれる方が増えてきたときに、新型コロナウイルスで事態が急変します。

── 飲食店にとっては死活問題の出来事だったかと思います。 突然の営業自粛を余儀なくされ、スタッフたちをフォローしながら会社の資金繰りに奔走しました。何より私たちのコンセプトである“for u=お客様のため”に注力できない毎日が、本当に心苦しかったですね。大きな危機をいったん乗り越えた今では、経営者として成長できたと言えますが、当時はプレッシャーで押しつぶされそうでした。

── 平井さんは、試行錯誤や新しい挑戦をするとき、どんなことを心がけていますか? forucafeを立ち上げた当初から大切にしている“選んだ答えはすべて正解”という言葉があるのですが、これは、経営者10年目を迎える私の支えであり信念です。いろんな意見やアドバイスに流され過ぎないよう、やると決めたらとにかく貫き通す。そうやって、これからもその時々の道を自分自身で決断して、しっかりと正解にしていきたいです。

新たに思い描く、飲食経営の未来。

── 経営者として、平井さんの今後のチャレンジについてもお聞かせください。 構想していることは2つあります。1つは、forucafeを使った子どもたちの職業体験。アミューズメントのような職業体験ではなく、実際に営業する店舗に子どもたちを迎え入れて、よりリアルなふれあいを通じて食やビジネスについて考えるきっかけを提供できたらと思っています。こうした取り組みによって、地域で愛される息の長いお店に育てていきたいという思いもあります。もう1つは、行政や企業との協業による、地方創生プロジェクトにも力を入れていきたい。実はこれまでも「forucafe meets local」という名前で、北海道知床の鮭や上士幌町のお豆を使った期間限定メニューを提供してきたのですが、現在新たに、宮城県気仙沼市、長崎県壱岐市、福岡県北九州市という3つの自治体と協業で、期間限定のカレーをメニュー化するプロジェクトも動き始めています。それぞれの地域や食材に込められた思いはもちろん、食に関する問題にふれることで、私自身多くの学びを得ています。今後も私たちが架け橋となって、社会課題の解決や食ビジネスの新しい可能性を切り拓いていきたいと思っています。

── そのような意識になったきっかけがあれば教えてください。 やはり子どもを授かったことが大きいですね。月並みですが、母親として新たに生きる意味を見出せましたし、娘の存在を通じて改めて自分の事業の意義を考えることができたのだと思っています。ちょうどコロナ禍で会社を存続させるために奔走していたときにお腹にいたので、出産と経営という2つの山を乗り越えた感慨深さもあったと思います。

今の私に足りないものが、揃っている場所。

── 平井さんは、普段OCA TOKYOをどのように利用されていますか? 5階のOcafeにもよく行きますし、Conditioning Studioで体を動かしたりもします。日々仕事と子育てに追われている私にとっては、自然とリフレッシュできる貴重な場所です。何より経営の大先輩のような方から年代の近いメンバーもいて、皆さん素敵な人たちばかりなのも魅力的。今の私にとって、足りないものがすべて揃っている。そんな場所のようにも感じますね。

── 最後に、平井さんの考える人生を謳歌するために大切にすべきことや、心がけるべきことを教えてください。 やっぱり、あらゆることを垣根なく全力で楽しむことが大事だと思っています。言い換えるなら、自分で楽しむコトやモノや場所を、自ら選んで決めるということ。自ら選んだのであれば、最後までやり切って楽しまなきゃもったいないと思っています。仕事においてもプライベートでもそのスタンスをずっと大切にしていきたいですし、好きなことを仕事にして夢中になっている自分の姿を、これから娘に見せていきたいですね。

平井 幸奈

株式会社フォルスタイル 代表取締役

1992年生まれ、広島県出身。フレンチレストランのキッチンでのアルバイトをきっかけに料理の世界へ魅了され、単身オーストラリアのシドニーへと渡り、billsサリーヒルズ店、ダーリンハースト店で修行。帰国後の2013年9月、大学3年時に「forucafe」をオープン。その後2014年に株式会社フォルスタイルを創業。現在は、都内にカフェ 5店舗と、自家製グラノーラ「FORU GRANOLA」、ケータリング事業「FORU CATERING」を運営している。

Archives