SELECTED EVENTS 013

みんなの力で未来をつくる

Released on 2022.07.29

6月15日に開催したイベント「SDGs×食 スペシャルトークショー」では、「みんなのおべんと。」という地域支援プロジェクトをテーマにトークショーが行なわれました。今回は、プロジェクト発起人の一人である「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」のオーナーシェフ・岩澤正和さんにインタビュー。プロジェクトの背景や、料理人としてのお考え、社会活動に取り組む意義など様々なお話をお聞きしました。

PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO オーナーシェフ岩澤 正和

1979 年生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。ピッツァの本場イタリアに渡り修行後、国内の大手飲食チェーンを経てピッツァ業界へ。2006年に出場したナポリピッツァ世界大会では最優秀賞を受賞。2012年に独立し、練馬区石神井公園に「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」をオープン。独自開発した国産小麦をはじめ、地元の野菜や果物、日本中の生産者から仕入れる選りすぐりの食材を使った料理を提供する。レストラン経営にとどまらず、地域連携や医療従事者支援、食の開発など様々なプロジェクトを立ち上げ活動中。
https://filippo.jp/

本当に良いことをしたい。その一心で動いています。

── まずは今回のイベントでご紹介するお弁当プロジェクトについて教えてください。 今回ご紹介させていただく「みんなのおべんと。」というプロジェクトは、練馬区にある農家と飲食店と福祉作業所が連携した、同じ地域に住む人たちのつながりによるサポーティブなプロジェクトです。提供するのはいわゆる「のり弁」ですが、練馬で採れた野菜をはじめ、石川県JAが斡旋する自然栽培のお米、長崎の国境離島近海で獲れたアジのフライ、サステナブルな包材など、その1つひとつに「食」について考えるきっかけを用意してお弁当にしています。

── どんなきっかけでスタートし、どのような課題を意識して取り組んだのですか? このプロジェクトは練馬という地域のつながりを生かしたプロジェクトで、もともとは今回の発起人の一人であるクリエイティブディレクターの望月重太朗さんに、地元の福祉作業所の方へ新たな仕事をつくることで応援がしたいという相談をしたのがきっかけでスタートしました。練馬は昔から、農家さんが当たり前のように福祉を支援する仕組みがある地域なので、練馬で代々農家をしているさかい農園の酒井さんにも声をかけました。価値観が合うメンバーが集まって、もともとあった支援の仕組みを発展させていく。そんなイメージで始まったプロジェクトですね。「ピザ屋なのに、のり弁?」という声もありますが、ブレない思いと目的がしっかりあるので、胸を張って取り組んでいます。

── 料理人が異業種の人たちとつながることに、どのような可能性を感じていますか? 同じ価値観と思いを共有して、仲間が集まってアクションを起こす。それって実は難しいことじゃなくて、どこにいてもできることだと僕は思っています。地域ならではの食と、そこに暮らす多様な職種の人たちの掛け合わせによって、自分たちの身近な課題を解決するための新たな仕組みや、オリジナリティのあるものを生み出していく。そこには、すごく多様な広がりがありますよね。これまで気づかなかった宝を輝かせるチャンスだし、何より料理人としても視野が広がるのでとても意義を感じます。

── 岩澤さんは、どのような価値観を大切にしながら普段の営業や地域活動をしているのですか? 本当に良いことをしたい。とにかくその一心です。あと料理人という仕事は、なんて夢があるだろうと、最近つくづく思います。生産者、加工業者、お客様、従業員、地域の人たち…。料理人って、関われる人たちに際限がないので、それだけ多くの人たちをハッピーにできるし、あらゆる困りごとの突破口にもなれますから。それにレストランという場は、美味しい料理を提供するだけでなく地域のコミュニティや支援の受け皿にもなれる。そうやっていろんな可能性に気づかせてもらえたので、これからも一層いろんなことにチャレンジしたいですね。

── お話を聞いていると、料理人の未来も様々な選択肢が広がっているように感じます。 おっしゃる通りです。おそらく多くの料理人は、修行して独立して稼ぐことがゴールだと思い込んでいるのではないでしょうか。僕も最初はそうでした。ただ最近は、特にうちのスタッフには、それ以外の選択肢もあることを知ってもらいたいと思っていて、これまで自分が主軸となって動いていたプロジェクトに巻き込むようにしています。例えば、最近だと地方の福祉事業者が就労支援を目的としたカフェを運営したいという相談を受けて、いつもなら僕が一人で動くところを、毎日ピザ窯で焼き具合を見ているスタッフに「一緒に行こう」と声をかけてみたり。ある意味、無茶ぶりです(笑)。でも、案外楽しんでくれるという期待も込めて、任せていこうと思っています。

── 最後に岩澤さんが、人生を謳歌するために大切にしていることを教えてください。 僕にとって謳歌とは、やっぱり“みんなの力で未来をつくる”ことだと思います。今回のお弁当に限らず、これからも食を通じたチャレンジは続けていきますので、各方面で輝き続けるOCA TOKYOメンバーの皆さまと、いつかまたお会いできると嬉しいです。

「お弁当に込めた思いを知って、自分の仕事に誇りを持てるようになったと
福祉作業所の人たちが言っていたのがとても嬉しかったです(岩澤)」

3人のお話を聞きながら、実際のお弁当を食べることで新たな食の可能性を考える機会に。

OCA TOKYOでは「鮮烈に人生を謳歌する」をコンセプトに、皆さまの感性を揺さぶるイベントを開催しております。詳細はトップページをご覧ください。

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