SELECTED EVENT 017

人と自然、時が織りなす酒造り

Released on 2022.09.30

OCA TOKYOでは、8月25日にイベント「浄酎 ~日本酒、焼酎に次ぐ第三の和酒~」を開催。お越しいただいた皆さまと、日本酒を原料とする新しい種類のお酒「浄酎」を飲みながら、その魅力を五感で感じる楽しいひとときを過ごすことができました。今回は、そんな「浄酎」を開発したナオライ株式会社の三宅紘一郎さんにインタビュー。開発経緯やご自身のお酒造りに対する思いなど、様々なお話をお聞きしました。

ナオライ株式会社 代表取締役 三宅 紘一郎

1983年生まれ広島県呉市出身。親族に酒造関係者が多く、幼い頃から日本酒に興味を持ち、大学時代は日本酒を中国で広げたいと上海へ留学。20代の9年を上海で過ごし日本酒を売り歩く。帰国後、2015年に瀬戸内に浮かぶ離島・三角島に本拠地を置くナオライ株式会社を創業。「時をためて、人と社会を醸す」というビジョンを掲げ、独自の商品開発をはじめ日本酒の魅力と多様性を切り拓く事業を展開中。

想像力を掻き立て、細胞を震わせる究極のお酒を造りたい。

── まずは、今回のイベントの主役でもある「浄酎」の特徴や魅力をご紹介ください。 浄酎は、もともと日本酒の長期熟成を目指して生まれた新しいジャンルのお酒です。私たちナオライの独自技術によって、純米酒を約40度以下で「低温浄留(特許取得済み)」させることで、本来持っているお米や糀の香りを失うことなく引き出しています。日本酒の香りを凝縮させ、常温で長期熟成できるお酒として楽しんでいただけると思います。

── 今回のイベントでは、どのような体験をご用意しているのですか? まずはそのまま、浄酎を飲んでいただくのはもちろん、今回のためにOCA TOKYOのバーテンダーの方に考案していただいたオリジナルカクテルや、ペアリングのおつまみをお楽しみいただきたいと思います。あとは、スライドなどを使いながら、土づくりからこだわったオーガニックファーマーの方々と連携したナオライのお酒造りのことや、浄酎事業で描くビジョンについてご紹介する予定です。OCA TOKYOという素敵な空間で浄酎を飲みながら、酒蔵のこと、お米のこと、微生物のこと、自然のことなど、いろんな背景に思いを巡らせ、皆さまの五感を刺激できるように精一杯ご紹介しようと思っています。

── 三宅さんがナオライを創業したきっかけを教えてください。 もともと親族がお酒造りに携わる人が多くいる家族に生まれたので、自然と日本酒には興味を持っていました。少しずつ日本酒に関する知見を深めていく一方で、200年以上続いた歴史ある酒蔵があっけなく潰れてしまうなど、厳しい現実も知るようになります。とにかく酒蔵を守りたい。そのためにも日本酒の販路を世界へ広げなくては。そんな思いを大学時代から持っていたので、当時留学していた上海では20代のほぼすべてを費やして日本酒を売り歩くビジネスを始めたりもしました。それらの経験を踏まえて「もう一度、日本酒をブランド化して価値を高めて届けよう」という思いに至り、帰国後ナオライを創業しました。

── ナオライでは、どのような価値観を大切にしてお酒を造っているのでしょうか? 最初に念頭に置いたのは、自然の力を活かすということ。究極のお酒は、究極のお米から生まれる。究極のお米は、やはりいきいきとした自然環境の中でしか育たない。そんなシンプルな考えに辿り着き、田んぼの土から育てるような、自然の恵みにこだわったお酒造りを心がけています。実は、創業したタイミングで化学肥料や農薬を一切使わないレモン農園を始めたのですが、そこでレモンを育てる土や、そこに息づく微生物がとても大切なことに気づかされて。そこから現在のような指針が生まれたとも思っています。

── 現在進行中のプロジェクトでご紹介できるものがあれば教えてください。 現在、ナオライは呉にある三角島(みかどしま)という瀬戸内の離島と、広島県中東部の神石高原町に拠点があるのですが、僕たちのお酒造りに興味を持ってくれた人たちのために“生産者になる旅”を企画したいと考えています。例えば、地元の農家の方と一緒にお米を育てたり、酒蔵へ出向いて一緒にお酒造りに参加したりするような、お客様自身も造り手として関われるような体験を提供することで、より深くお酒を味わっていただきたいと思っています。
もう1つは、最近、広島の安芸高田市の方から「地域の特徴を表現したお酒を浄酎で造れないか」というご相談を受けたのですが、その土地ごとに特化した浄酎の開発には可能性を感じています。地域にある酒蔵はもちろん、お米、柑橘といった地域の素材を活用しながら、自分たちが誇れる浄酎へと昇華させる。けして簡単ではありませんが、何か競争のない世界を築けるような予感もしていて、個人的にもワクワクしています。

── ナオライの今後のビジョンを教えてください。 私たちは「時をためて、人と社会を醸す」というビジョンを掲げているのですが、自分たちのビジネスを通じて、本来あるべき自然環境や人々の営みを取り戻していきたいと考えています。例えば、今後自分たちの拠点を増やし、農薬や化学肥料を使わない原料づくりを推進することで、日本全国に豊かな土壌を増やしていきたいですし、各地にある小さな酒蔵とも積極的に協業することで、日本酒の文化や営みを守りたい。実は売上目標みたいなことよりもずっと大切だと捉えていて、1つひとつの実践を未来へつないでいくことこそ、ナオライの使命だと考えています。

── 最後に、三宅さんが「人生を謳歌する」ために大切だと思うことを教えてください。 「想像力の広さ=人生の豊かさ」だと思っているので、人生を謳歌するためには、想像力を広げることが大切だと思っています。日頃の仕事においても、飲む人の想像力を掻き立てるような、細胞が震えるような究極のお酒を造るべく、僕自身、常々いろんな想像を膨らませながらお酒と向き合っています。浄酎というまだ歴史の浅いお酒を、育て、広めていくことで、僕自身も人生を楽しんでいきたいですね。

3種の「浄酎」をテイスティング。
それぞれの味と香りを堪能していただきました。

浄酎をはじめとする、ナオライの真摯なお酒造りのお話を伺いました。

OCA TOKYOオリジナルカクテルをご用意しました。

農薬、ワックス・防腐剤、化学肥料を一切使用せず、
自然との共生を大切にしたナオライのレモン農園。

浄酎をオーク樽で熟成させているところ。

OCA TOKYOでは「鮮烈に人生を謳歌する」をコンセプトに、皆さまの感性を揺さぶるイベントを開催しております。詳細はトップページをご覧ください。

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