OCA TOKYO BLOOMING TALKS 057

本気で世界に幸福を

Released on 2023.01.13

OCA TOKYO BLOOMING TALKS

BLOOMING TALKS

自然体でテーマと向き合い、出会いに感謝し、相手を思いやりながら、
会話が咲く。笑顔が咲く。発見が花開く。

そんなコンセプトでお届けするOCA TOKYO限定のWEBメディア。
「BLOOMING TALKS」

新鮮な出会いと、魅力ある人たちの言葉を通じて、人生を謳歌するヒントを発信していきます。

新しいこの場所で、きょうも、はなしを咲かせましょう。

いかにも“旅人”といった風体で取材場所に現れたのは、OCA TOKYOメンバーの髙橋伸彰さん。世界中を忙しく飛び回っているというアクティブな日常が伝わってきます。現在、新興国で事業創出までをも含む、第一次産業向け金融ビジネスを中心に活躍されている髙橋さんに、自身の事業内容とともに、その理念でもある「世界に幸福をもたらす」という志の真意についてお話を伺いました。

限界まで借金をして、まずは退路を断ちました。

── 髙橋さんが代表を務める株式会社ファルスの事業内容を教えてください。 全人類に持続可能な幸福をもたらすことを目標に、未利用のお金を有効活用する事業を展開しています。日本のような先進国にはお金が潤沢にあるものの、自国の成長が見込めず、うまく活用されていない。一方で新興国は成長が見込めるものの、お金がない。そうであれば、この2つを結びつけることによって双方が幸せになれる。そんな先進国と新興国のお金と仕事を結びつけ、たくさんのウィンウィンの関係を築いていくことに力を注いでいます。

── 具体的にはどのようなことを行なっているのでしょうか? 手法としてはいわゆるマイクロファイナンスです。例えばカンボジアでは、トラクターやコンバインといった農業機械の購入資金を融資しています。当初現地の農家さんは水牛を引いて畑を耕していたこともあり、実際に農機を導入したことで今まで2ヶ月かかっていた作業が2日でできるようになりました。経営効率が飛躍的に上昇するため、農地を拡大するなどビジネスチャンスを広げることができますよね。他にも、酪農の会社に融資して牛乳瓶を作る新会社の設立や、牛乳を売るためのスーパーマーケットの出店・展開などもサポートしています。このように、ただ融資をするだけでなく、現地における持続可能な事業創出をお手伝いすることが、私たちの一番の特徴かもしれません。

── 信用が低い人への融資というリスクはどう考えていますか? カンボジアの農家さんは銀行口座すら持っていない人ばかりなので、当然リスクは承知の上です。農機の購入であれば農機自体を担保にできますから、いざとなったら農機を回収するか、いっそのこと自分たちで農業を始めてしまう、なんてことも選択肢には入れてあります。要はそのくらいの覚悟で融資しているんです。自分自身もこの事業を始める際、限界まで借金をして退路を断ってから行動しました。まずは自分がリスクをとって、それでも大丈夫だと証明していく。そうして地道に実績を重ねていくことで、こちらの本気度が伝わると思うのです。金融とは、ある程度の長い期間でともに成長していける関係をつくることが本来の役割だと考えています。だからこそ、人として心から信頼し合うことが、まずは一番大事だと思います。

世界一貧しい大統領は、世界一幸せな大統領でした。

── 世界的に見ても意義深い優れたビジネスモデルだと感じたのですが、その構想の原点はどんなところにあったのですか? もともと自分がお金に苦労してきたことがひとつです。幼少期からの暮らしはもちろん、大人になってやりたいことがあってもお金がなかったり借りられなかったりで。やがて仕事で世の中のお金の流れを知っていくうちに、もっと必要なところに必要なお金が届くような、より多くの人が幸せになる仕組みを構築すべきではないかと考えるようになりました。以前私が立ち上げた株式会社フィル・カンパニーの事業もまさにその思いが詰まっています。駐車場の上空を店舗に利用することで、店舗側は好立地な出店が可能になりますし、駐車場のオーナーはさらなる収益が見込め、その地域がさらに活性化されます。要するに、お金を上手に再配分することが大事だと思うんです。ただ気をつけなければいけないのは、特定の人ばかりがもらいすぎないこと。きちんと幸せを分け合える人のところにお金が行く世界であってほしいなと思っています。

── おっしゃる通りなのですが、とは言え自分がより幸せになりたいと願うのが人間の性ですよね? そうですね。私だって幸せになりたいですから。ただ自分の幸せを改めて考えてみると、家族や友人・知人が幸せでいてほしいし、そうであれば日本が、そして世界が幸せでなければいけないと気づきました。誰しもひとりでは幸せになれないんですよね。それで思い出したのは、「世界一貧しい大統領」としても有名なホセ・ムヒカさんが好きで、以前ウルグアイまで飛び込みで会いに行ったことがあります。現地の人が案内してくれて、最終的にはなぜか何十人という現地で出会った子どもたちと一緒に行くことに(笑)。多くの人に愛されていることがすぐにわかりましたね。結局ご本人には会えず、弾痕だらけの家の前で、門番の方とゆっくりとお話ができました。そのときに私は、彼は「世界一幸せな大統領」だと感じたのです。幸せと、お金持ちになることは、必ずしも直結していないということもこの経験から再認識できました。

── 争いごとが絶えない現代で多くの人が幸せになるために、髙橋さんはどんな視点が大切だと考えますか? 参考になるのは、新興国の人々の暮らしだと思います。彼ら彼女らの幸せは本当にシンプルなもので、家族とご飯が食べられるとか、友達と遊べるとか、勉強ができるとか。気持ちのいい笑顔が多くて、それを見ているこちらも幸せな気分になれます。一方、先進国を見てみると、例えば自殺率が非常に高い。新興国はほぼゼロなのに。最近「ウェルビーイング」という言葉が流行っていますが、これは現状が幸せではないことの証左でもあるような気がします。もちろん幸せの価値観は人それぞれですが、根本のところはそんなに違わないのではないでしょうか。

新興国は、未来の先進国。

── 髙橋さんは今後どんな活動に注力していきたいと考えていますか? 最近よく考えるのは、教育の分野です。先ほどお話しした農業のことで言えば、農家さんに農機の購入サポートや大枠の事業は説明できても、実際にどんな作業をすればいいか教える人がいないと成り立たないし、事業拡大も難しい。そこで構想中なのが、日本で農業教育を行なっている会社と一緒に、リアルおよびオンラインで農業を学ぶ機会をつくること。それと同時に、日本で農業を学びたいと考えている特定技能実習生への教育ローンみたいなことも始めています。実際に日本へ勉強しに来るために自国で怪しい金融に手を出して、後日返済できなくなる若者も多いそうです。若い人がきちんと学び、育つことができれば、その国の農業も健全に成長していけるはず。だからこそ、未来ある若者を支援する意義は大きいと考えています。

── 新興国の農業の未来はかなり明るいように思えてきます。 現時点でも、例えばGPSを取り付けた農機やドローンを活用することで、より効率的な農作業を日々模索しています。今はまだ小手先の技術が先行してしまっていますが、自然農法などの健康的で持続可能な農業の知見を深めることで、いずれは先進国にも誇れる農業へと育てていきたいです。何年か後には、カンボジアをはじめとした新興国が、世界の農業先進国になっていても何ら不思議はありません。農業に限らず、ある国では公道を走るバイクのほとんどが電動だったり、別の国では輸血用の血液はドローンで運ぶのが当たり前だったり、すでに想像以上に発展している新興国はたくさんあります。これからもっと可能性は広がっていますし、何よりワクワクできることが多いように感じています。

── いまだに多くの国を飛び回るバイタリティもすごいですね。 ありがとうございます。今は沖縄に住んでいて、会社のある東京、それと海外を3分の1ずつ行ったり来たりしているイメージです。移動だけでも大変な面はあるのですが、つまりは本気で生きているかどうか、だと思います。自分が本気でやりたいことをやっていたら、大変なこともそんなに大変に感じません。それこそ、ここOCA TOKYOには本気で生きている方が多いと聞いて、それなら感覚が合いそうだと思いメンバーになった経緯もあります。そういう人たちは決まって社交性がありますし、お互いのリスペクトも欠かさない。年齢関係なく心地いい会話ができると思ったし、利用してみてからもそう感じています。

命をかけて、人生を楽しもう。

── OCA TOKYOの第一印象はいかがでしたか? 東京のど真ん中の、こんな上質な空間を自分が利用しても大丈夫なのか…? そんな違和感を正直抱いていました。というのも、仕事柄、国内外問わず飛び回っているので、今でもよく1泊1,000円程度の質素なゲストハウスに寝泊まりすることもあって(笑)。とは言え、抜群の立地と居心地の良さは魅力的で、本当に1日中快適に過ごせる場所だと思います。

── 普段はどのように利用していますか? 仕事でちょっと集中したいとき、もしくは頭と体を休めたいときなどには1人で利用しますが、たいていは誰かと会う場所として役立てています。特に融資の相談などで会う方とはけっこうお金の話をするので、知らない人に聞かれる心配もないし、場所としての安心感はとても魅力的です。

── OCA TOKYOに期待することがあれば教えてください。 先日イベントに初めて参加した際、私は参加者のことをほとんど知らなかったのですが、スタッフの方のサポートもあっていろいろな人とつながることができました。特に上の世代の方とコミュニケーションできる機会は貴重なので、今後もそういった人とのつながりが生まれる企画を続けていってほしいと思っています。

── 髙橋さんが人生を謳歌するために大切にしていることを教えてください。 やはり、本気で生きることです。中途半端に生きていると、得るものも中途半端だと思います。本気であれば、たとえ失敗してもそれが大きな学びになります。ある意味、命をかけて人生を楽しもうとする姿勢を、謳歌と呼ぶのではないでしょうか。ただ、本気も度が過ぎるとそれはそれで疲れてしまいますよね。私も鬱になったことがありますが、実はある国のスラム街を訪れたことで心を救われました。

── スラム街で「救われる」という心境になることもあるんですね。 自分なんてまだまだ恵まれている方だと思いましたし、現地の子どもたちの笑顔を見ていたらなんだか元気になれたんです。なので、どうしようもなく迷ったり困ったりしたら、何かをリセットするのもありだと思います。ゼロから始めるということは、何もなくなって不安なのではなく、目の前に無限の可能性が広がっている状態です。可能性があるからこそ本気で取り組もうという気になれますから。

髙橋 伸彰

ファルス株式会社 代表取締役

学生時代にバックパッカーやベンチャーの起業・経営を経験。2005年に設立した株式会社フィル・カンパニーが、2016年に東証マザーズ上場。直後にその代表を退き、ファルス株式会社を創業。現在は新興国での農業系金融ビジネスを中心に、世界中に持続的な幸福をもたらすための活動を行なっている。

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